飼槽の原則と工夫を考える

村 上 明 弘

 飼槽の価値についての評価は以下のようなことが考えられます。

・気分の良い環境だ(温・湿度、光、臭気)
・飼槽に接近しやすい
・食べる時、体がどこにも触れない
・他の牛に邪魔されないで食べられる
・口が簡単にエサに届く
・飼槽に足を入れない
・飼槽にふんが落ちない
・牛が外に出られない
・牛が飼槽に落ち仰向けのままにならない
・エサがこぼれ落ちない
  ・容易に給餌できる
・飼料の投入容量が大きい
・水や土砂、ふん尿やゴミが入らない
・鳥獣虫が接触できない
・変質変敗が進みにくい
・飛んだ飼料の掃き込みが容易
・簡単に清掃できる
・簡単に改変、改造ができる
・コスト効率がよい

図−1 飼槽設計の原則
 
高さは、牛側床面からマセン棒下面まで、体高の80%(116〜122cm)位。
幅が狭ければ高さを上げ、広ければ下げる。

注: 牛がどこも強く押さない設計になっていれば、施工資材に不必要に丈夫なものを使わなくてよい。

(1) 仕切り壁は薄ければ薄いほどエサに届きやすい。
高さはチョークを受けない位置までにする(親牛で65cmまで)。
仕切り幅がぶ厚くなるほど高さを下げる(15cm以上の幅なら)。
上部の角は面どりをする。
(2) 飼槽床面高は牛側床面より少し上げる(5〜15cm)。
(3) マセン棒
首の上つけ根が、一番遠くのエサを食べる時でも触れないスレスレの位置に付ける。
幅は牛側仕切り壁面からマセン棒の牛側面まで、30±5cm位。
 
(4) 支柱が飼槽側に出る時は、前肢を乗せるステップをつける。ステップの幅は25〜40cmにし、高さはふん押しに支障のない限り低くする(6〜7cm以下)。ステップをつけた時は、その高さに合わせ仕切り壁を下げ、飼槽床面を上げる。
(5) マセン棒の高さによるがこの空間が広すぎると小さい牛が出る。原則の設計内なら60〜65cm以上にしない。
(6) 牛の口先舌が届く距離は、仕切り壁の牛側面から80cm位。エサを飛ばす先端は130cm以内位です。

 これらの項目が可能な限り実現されている飼槽が望まれます。清潔なエサを、いつでも、簡単に、欲しいだけ食べられ、かつ、必要量を簡単に運搬給与でき、更に、投資効果が高い…。その目的にできるだけ近づけるようにします。

 すべての目的を完璧に果たすことはできません。大抵の施設設計はあちらを立てればこちらが立たずになります。各項目の価値を序列化し、各農場における事情に合わせたやり方をし、総合での最高点を狙います。

飼槽設計の原則と応用のアイデア

 図−1に原則を示しました。要はこのような原理原則を実現できるようにすることです。しかし、この目的を100%現実化することは不可能です。「短所を抑え、長所を伸ばす」感性が施設設計の能力の差になります。

 原理に基づいて目的を果たすこと。その手段は多種多様にあります。それをどう採用するか?できない理由は、意識はするが、強調しないで横に置き、できる理由捜しをするのが、うまい設計者の条件となります。

図−2 原則応用のアイデア

a.仕切り壁
 
仕切り材に廃材板や道路などに使われているガードレール廃材など…何でもよいので、クリーンラインとダーティラインを仕切れるものを利用。
フリー飼養牛の飼槽やつなぎ飼養牛の屋外飼槽や屋外飼養の乾乳牛や育成牛の飼槽に利用。
パドックコンクリート上に施工する時は、飼槽に地上水の入りにくい勾配を利用するなら、平面上につくってもよい。
支柱が飼槽側に出ても掃除しにくいが、あきらめる!
飼槽側に仕切り板をつけると支柱が牛側に出て、ステップが必要になる。
b.いろいろなものを使ったマセン棒
 
ワイヤー、細〜太い丸鉄や丸棒、角鉄材、角木材、平鉄材、平木材…矢印部分の寸法どりさえ原則を守れば、何を使ってもよい。
c.可動式マセン棒支え
 
農場や群毎の微妙な寸法対応や、発育やその他による体格の変化、適寸法どりの自信不足に対処するため、可動式にする。
d.簡易箱形飼槽
 
夏の暑い時ははずし風通しをよくし、冬の涼しい時には簡易箱形にし、ハキ込み作業を減らすのもよい。また、立地条件のよくない所で応用。
勾配は3行ったら7あがる角度。
簡単につけはずしができるようにする。少し丈夫にしたパネルを使い、下が牛側にズレ込まない工夫をし(矢印部)、ところどころを支柱と結んで倒れないようにする。またエサのハネ上げこぼれを防止する時は上部にハネ返しの板などをつける。
箱形は牛が落ち込むと危険なので、マセン棒では少し不安。縦仕切り首入れ枠の方が無難。
e.丸太や枕木を支柱にする  
パドックなどに簡単に飼槽をつくりたい時、コンクリートやアスファルト面に穴をあけ(道具がある)太めの材を使うと便利です。マセン棒は支柱直接取りつけでほぼ寸法が合います。

(報告者:北海道十勝北部地区農業改良普及センター・主査)