酪  農=経営再生〔IV〕

─成否の鍵は繁殖!─

村 上 明 弘

IV.繁殖管理

 不振な繁殖は生産性をだいなしにします。そして、年間収入の元となる産乳量を自動的に減らします。

 繁殖成績は、多くの技術の「絡み合いの結果」を反映しています。すなわち各技術における非効率、無意味、無駄、悪影響を抱え込んだ果ての繁殖不振なのです。単に今後の生産低下が懸念されるのみでなく、不十分な技術による損失をすでに作り出してしまった結果の繁殖不振でもあるのです。

 あらゆる技術や経営方法の総合の結果が経営成績です。繁殖に関わる技術分野はその中でも最大のものです。飼養管理に関わるトータルな技術力のアップがあってはじめて、半自動的に繁殖の好成績が得られます。そこに経営的な判断による淘汰や導入が加わり、そして一定の時間経過後、経営成績の向上と安定が実現されるわけです。

 経営再生という視点から発想する繁殖性向上のシナリオは次の内容です。もちろん経営困難の度合いによることは言うまでもありません。

 以下は、再生のために時間的なゆとりがそんなにない場合です。

長期不受胎牛などの積極的な淘汰計画

分娩前後における健康水準のアップ

積極的な子宮清浄化の処置

早期種付けの徹底(分娩後40〜45日から)

繁殖不振牛に対する強め淘汰の実践

適正乾乳期間の設定と実践

全牛、泌乳制限なしの一発乾乳実施

不足牛を初妊近腹牛で導入

1.不振な繁殖成績に関するキーワード

 今までの体験から得られた繁殖不振の原因を以下に列挙してみます。

・過肥・過痩。両方目立つは困難のもと (太り過ぎは諸悪の根源)

不調な繁殖。過肥→不受胎のもと

移行期のトラブル多発。最後は不妊

見つけない(られない)発情。種付け不能

片手間の発情発見。見逃し多発

・徴候の弱い昼間に発情捜し

・早付けと世間が言えば、我も早付け

・高泌乳。一発乾乳できぬのに早付け

結果待ち。出たとこ勝負の発情チェック

・来ぬ発情。何時まで経ってもせぬ受診

絶対に付けない種はとまらない!

・年1産。最初の授精に計算合わせ

・スタンディング見ずの発情、何時付ける?

・発情と見ればすぐにも付けたがる

汚れてる子宮は生命をはぐくまず

PG(プロスタグランジン)の魔力。技術改善の意欲削(そ)ぎ

乳牛は、困ればすぐに子作り延期

・毒物掃射(外因、内因とも)の辛い日々。卵も胎芽も、フラフラでーす!

ストレスの嵐に、繁殖立ち往生

“そのうち、とまるべや!”。それが強敵

受胎(と)まれば全部残す(淘汰せぬ)癖

“もう♪、どうにもとまらない♪”牛に、何時までも残す未練!

・授精済み。再発なしと勝手決め

・妊鑑をせずに乾乳、胎子は…何処?

・多発する流早産を軽く見る

・発情の熱に冷たい鉄の筒

・施設不備。手間取る授精。疲れる人・牛

・成績をストロー数で競う不可思議

・日曜・祝日、繁殖治療は対象外。続く日曜

・定例の繁殖検診。行事化し

・検診に夢中なあまり、エサやり後回し

・プラスのみ求めて妊鑑2ヵ月以降

・短時間を、前後に分ける授精作業

昔から、あまり変わらぬ繁殖帳簿

種付けの決定権を他人ゆずり

・直検をしてくれないと、不安がる

 思い当たるのがたくさんありましたか?繁殖は、管理者の意志により、まだまだ多くの向上が期待できる技術分野です。「その気」さえあれば、ほとんど投資なしでできます。(太字は特に問題と思うものです。)

 しかし現実は、繁殖に関わる仕事の本来業務としての作業化は、必然的なものとは思えないようです。少々の決意くらいでは、何か他に忙しいことがあるとあっさり手抜きや忘却を受ける「仕事」が、繁殖のようです。

 本当に、強固な意志で「積極果敢に」繁殖管理をする決意をしましょう。すると、道は開け、大きな報酬を、1年くらい間をおいて手にすることができます。

2.繁殖不振な牛群の不都合サイクル

 経営の不振が何を基盤にして始まり、何をキッカケにして加速するのか、その理由は様々です。基盤の方は、行き着くところ人間そのもの、組織そのものになるでしょう。一方、加速させる要因は、多くは分娩・産褥期のトラブルとそれに連動する繁殖障害です。

(1)体が困ると、先ず繁殖力を弱める

 乳牛(動物は皆同じか?)は体調不振に陥ると、自分の体を守るために、生産活動を弱めます。

 生産には、産乳(量、成分)、発育、繁殖、産肉、胎子の発育などがあります。体が困っている程度に応じ、その中に弱める順番があります。

 真っ先に弱めるのが「これから妊娠する生理」です。すなわち、子を宿すのをやめようとします。さらに2番目以降にも弱める順番があります。また胎子の発育の中にも胎盤などの各組織間で順番があります。しかし結局、体がかなり困っても最後まで守り続けようとするのは妊娠の維持です。いったん腹に留まった子は、滅多に放棄しません。自分の生命が危うくなるまで守ろうとします。

(2)体が困るとは何か?

 体が困る理由は色々です。それを大きくくくると、以下になります。

 (1)精神的、肉体的な苦痛によるストレス

 (2)栄養需給のアンバランスによる体重減少

 (3)飼料や代謝病に由来する毒物の攻撃

 (4)繁殖に影響する栄養的因子の不足

 体が困っている程度を端的に表しているのが、ボディコンディションの減り方です。すなわち、体組織(体重)の減り方が大きいほど、困っているレベルが強いと理解します。

 卵巣内では頻繁に、卵子の素、原始卵胞が発生しています。体重減少(ストレス禍)の大きい時に、同時に生じる原始卵胞は、その後発育し、2〜3ヵ月後に排卵される時、「積極的に受精卵になるな!」と指示(?)されているようです。

 このくわしい解説は、昨年7回連載の畜産会経営情報「農場再生 こうして経営困難を打開する(5)」の14ページにくわしく載せてあります。そちらを参考にしてください。

 要するに、何かの事情…、例えば

 ・粗飼料品質の急変や量の絶対的な不足

 ・濃厚飼料のタイプ、種類、給与量、給与法、他飼料との栄養特性上の組合せ変更と不一致

 ・飼養管理法の大幅な変更と技術の不一致

 ・疾病多発による健康レベルの大幅低下

 ・暑熱や寒冷など環境的なストレス増大

 ・作業者の減少や交替、あるいは、繁殖管理者の多忙や体調不十分

 ・授精や治療やコンサルなど関係技術員の交替や不在

 何かの事情で、繁殖障害牛の淘汰を躊躇などが重なると…

【スタート】各種管理の低水準化
→不十分な技術の対応力
→体調不十分→採食量低下
→ますます体調不十分→ますます採食量低下→大きな体重減少→受精能の低い卵子
→発情発現力の低下→不十分な子宮の回復
→受胎能の低い子宮→発情発見力の低下
→卵巣機能の変調(膿腫や機能不全)
→授精や治療やコンサル力の低下
→かなりな繁殖障害牛群
→そうとう遅れて受胎
→淘汰・導入の不可能な事情
→低泌乳で長期間飼養
→過剰な体脂肪付着(過肥)牛群の出現
→「乳量減らしたくない」の気持ち症候群
→過剰な給与と長期搾乳
→「超」過肥牛群の出現
→難産・代謝障害・食欲不振の増大
→(疾病淘汰の多量発生)
→ますます大きな体重の減少
→多量な体脂肪の存在
→長期に及ぶ大きな体重減少
→ますますの受精能の低い卵子
→ますますの受胎能の低い子宮
→ますますの発情発現力の低下
→ますますの発情発見性の低下
→ますますの…∞×△□★!…

【エンドレス!】
→どうしましょう!?

3.繁殖不振牛群への打つべき技術対応

 繁殖不振に関する最大の悩みのひとつに、「いつかはそのうちとまる」というのがあります。この奇妙な安心感はどこから来るのでしょう?。

 どんな経営の型においても、その経営主が目的と決めた繁殖成績を実現しないと、収支を有利に展開できません。あまりにもひどい受胎の遅れは、その個性(バラエティ)の範疇外です。いつかとまれば良いというものではないと思うのですが…。

 育成からの上がりが少ないか、老廃牛の相場が思わしくないか、何かの都合で淘汰しそこない、遅どまりの低産乳牛を次々と残してしまいます。長い低泌乳状態は、結果的に過肥牛を量産してしまいます。そして前述のひどい低生産性な牛群を作る恐れを抱え込みます。

 まずは、どんな受胎のさせ方(授精の時期)があるのか、どんな繁殖障害牛の淘汰タイミング(前号で解説済み)があるのか、を理解したいものです。

 そのためには、まず、受胎のための生理項目を納得しておきます。

(1)受胎に関わる生理的な意味合い

 別図を見てください。繁殖に関する基本生理が、分娩後の日数経過とともにどのように発揮されるのかを「模式図化」したものです。繁殖の科学と経験を合体させたものであり、表現や内容は正確さに疑問があります。しかし大枠では原理に近いと思われますので、批判を抑えて現実的な利用をしてみて下さい。また、これをもとに自前の基準を作成してみるのも、繁殖技術を考えるよい練習かと思います。

別図 繁殖性に関する基本生理とその発揮の変動(模式図)

 排卵力、卵子の受精力、発情の発現力、子宮の状態による受胎力の4種類を主なものとして例示しました。それぞれの生理的な効力が最も発揮される時点を100%として、曲線によるグラフを描きました。強弱の変動には私なりの理由がありますが、ここでは多くの解説を省きます。

 例えば、受精力の変動は、その該当時期の2〜3ヵ月前に受けたストレス禍の程度に対応しています。分娩前1週〜分娩後3週までの大きなストレス(体重減少)期間が、分娩後70日頃からの大幅な受精力低下の期間に該当するのです。

 一方、左右あるいは上下の矢印は、飼養環境条件や技術対応力で変化が生じる、その範囲を物語っています。

 例えば、(1)の排卵力は、分娩後のその始まりが、乾乳初〜中期にかけての大きなストレス(刺し虫攻撃や暑熱や栄養不足)や分娩前後の過大ストレス(難産、双子、起立不能、強い暑熱、第4胃変異手術等)により、大幅に遅れます。それらが好条件なら、やや早まります。あるいは、(4)の子宮力(子宮の清浄度)は、栄養管理の適正化や分娩時の衛生保持、安産、ストレス最小化による免疫力向上、問題が想定される子宮の適正な清浄化処置などにより、11ヵ月分娩間隔ゾーンの中でも、大幅に強化できます。しかし、その技術の低水準により、同じゾーン内で大幅な低下も起こります。矢印はそういう意味です。

(2)時期別の繁殖性能とその比較

 別表に、受胎させたいと思うゾーンごとの、想定得点を作ってみました。排卵力、受精力、発情力、子宮力をそれぞれ高・中・低に分け、それぞれを掛算して「総合力」を得点化してみました。高は、これ以上は望めないが、技術を総合的に高めればここまでは可能だろうと思われる水準です。中は、ごく平均的な現実の姿(と思われる)を数値化しました。低は、技術的なミスが重なれば、ここまではアッサリと下がってしまうだろう位置です。すなわち、この表に、この4つの力のみに関する生理の、普通状態と最良のレベルおよび最低の場合を、勝手に総合得点化してみたわけです。

別表 期待する「授精」時期別の「想定受胎率」 (単位:%)

分娩間隔別 (1)排卵力 (2)受精力 (3)発情力 (4)子宮力 (5)総合力
(1)×(2)×(3)×(4)
(ヵ月) 水準別
11 100 100 90 85 76
100 100 85 75 64
90 90 75 60 36
12
(年1産)
75 55 65 100 27
70 50 60 95 20
60 40 55 85 11
13 85 80 95 100 65
80 75 95 100 57
70 70 90 100 44
※通常に、年1万kg前後以上搾り続けている牛群での推定

 この表の斜線枠には、4項目のパーセントを高中低バラバラに組合わせて掛算し総合得点を出す意味があります。また、項目数や発揮力の変化などを自由に決め(各人の考えと農場の事情を入れ)、作りかえて利用してみてください。

 しかし、現実の繁殖管理においては、この他に、高産乳状態そのものに由来する強制的(不可避的?)ストレス、飼養管理の総合力、繁殖に関わる栄養管理の特別対策力、季節的なストレス圧、発情表現のための行動性、発情発見力、授精タイミング力、種付け環境力、精液の活力、種付け技術力、繁殖診療力・・・などが複雑に絡み合い、この得点をより低下させようとします。

 また、さらには受胎後の妊娠持続力(黄体機能の向上や維持、流・早産の予防)や難産廃用の予防技術が関わり、実際の総合繁殖力は後退を余儀なくします。

 このような全体条件を全般にわたり、「今より少しでも都合のよい方に変える」継続的な努力が、いつの間にか、知らず知らずのうちに、繁殖を良くすることにつながります。

(1)分娩後55日頃(11ヵ月分娩間隔ゾーン)

 この頃から授精開始するのを、「種の早付け」と名付けています。

 この期間は、一般的に、子宮力のやや低いこととその変動の大きさ以外は、結構な繁殖性能を持っています。

 図から発揮力を総合計算すると、

 平均(中)で、

 (1)排卵力100%×(2)受精力100%
 ×(3)発情力85%×(4)子宮力75%
 =(5)約64%とかなり高い妊娠力になります。

 最高水準なら、

 (1)100%×(2)100%×(3)90%×(4)85%
 =(5)約76%

 全部が最低水準でも、

 (1)90%×(2)90%×(3)75%×(4)60%
 =(5)約36%。

 になります。

 以下、計算法は同じです。

 この期間の成績アップには、乾乳の前・中期における適正管理と子宮の至急な回復が大切な技術となります。

(2)分娩後85日頃(年1産ゾーン)

 一般的に、子宮力以外はかなり低い水準の発揮力になります。しかも他の3項目は大きく低下の方に変動しやすい生理上の条件を持っています。特に受精力はその傾向が顕著です。高まる方に変動する度合いはそんなに大きくありません。また、発揮力の低い期間を短縮する技術的可能性は、高産乳を求める限り小さく、逆に、その期間は、技術的なミスで簡単に大きく拡大します。

 総合力は、平均で20%、高くても27%、低いと11%位になります。そういえばこの頃はなかなかとまりにくい、という実感はお持ちかと思います。

 とはいえ、年1産が、管理上あるいは経営上もっとも効率的というのなら、このゾーン付近すなわち分娩後70〜100日の中で多く妊娠してくれるのが、一番なのですが…。しかし、それは、高産乳状態になればなるほど高望みの感があります。それでも、最良であることが事実なら、このゾーンの発揮力を少しでも高め、さらに本気になって発情発見や高度な種付け技術に心がけることが、第一義的に重要です。

 しかし、年1産の拡大解釈的な意味は、私なりには、11ヵ月分娩間隔ゾーンあたりで35%、年1産ゾーン辺りで20%、13ヵ月分娩間隔ゾーン辺りで30%、それ以降で5〜10%、繁殖不備(遅どまり、不妊)など5〜10%…程度の成績を目論み、総じてなんとなくの平均年1産を実現すれば…というものです。

 となると、どうしても種の早付け技術を確立せねばそれを実現できません。もっとも、近年の酪農技術の深まりは、たとえ高産乳のストレス下であっても、この位の結果は出せるようになっていると思われます。「種の早付け」技術をじゅうぶんに知っておく必要があります。後述します。

(3)分娩後115日頃(13ヵ月分娩間隔ゾーン)

 4項目全てが年1産ゾーンよりかなり高い発揮力となります。また、多くの牛がそうなります。

 しかし、高い技術力を背景にした時の11ヵ月分娩間隔ゾーンに比べ、子宮力以外はややかないません。また、条件に対する変動幅は早付けゾーンより小幅で、安定性はあります。ただし、排卵力や受精力は、高泌乳状態の牛に対する管理不十分や、かなりの過肥状態で分娩した牛、分娩から産褥期に強いヒートストレスを受けた牛、飼料組合せの不適合な変更などでやや強めに低下します。

 一方、発情不明、卵胞や黄体の膿腫、普通の発情なのに繰返し付かない生理障害などが目立つようになります。

 総合力は、平均で57%、高くても65%、低くても44%になります。

 この時期以降は少しずつ発揮力が低下してゆく傾向になります。この時期以降で種付けをし続ければ、大抵はそのうちなんとか妊娠するのですが、そのことはまた、年間の利益的な産乳量を確実に減らすことにもなります。ここまでで、しっかりと90%近く受胎させれば最良なのですが…。

(3)種の早付け

 以上の解説に同意できるなら、分娩後の相当早い段階から種付けをする重要性が、特に経営困難な農場において急務なことに気づくと思います。

 早付けに欠かせない周辺技術をできるだけ素早く整え、実行するのが再建へのかなりな早道になります。

 特に全搾乳牛に対する1種類TMR給与の農場で、繁殖不振、経営不振に陥った場合は、ことさらに早期受胎技術を強化せねばなりません。理由は、過肥牛多発が悪循環のもとだからです。

 まず、過肥牛の強め淘汰と普通コンディション牛の導入を図ります。そして、過肥の回避を徹底するために、早期受胎を本気で実行するわけです。それは、TMRで太りやすい乾乳前の牛を、高産乳状態で通過させ、過肥を予防するためです。

(1)事前か、同時進行の基本技術を整備

 早付けのためには、分娩後の早い段階からの発情回帰があり、加えてその徴候と行動を管理者に分かるように表面化させる事が必要です。

 すなわち、牛の健康状態が、自然に自動的に高水準になり、それが持続することがまず肝腎です。そのための技術変更は、昨年の7回と今年の前3回の連載の中で頻繁に説明してあります。

 ここでは大事な項目のみを列挙します。

ア.乾乳の前・中期における管理

 ・ボディコンディションのダウン防止(粗飼料中心、栄養ピッタリ給与)

 ・暑熱、寒冷、不自由、恐怖などのストレス軽減

 ・肢蹄性能のじゅうぶんな修復

イ.分娩時トラブルや代謝異常のじゅうぶんな抑制

 ・過肥状態の軽減化

 ・難産の徹底回避

 ・代謝病予防のための移行期管理を充実

ウ.ストレスフリーの実現

 ・生活環境の安楽性強化(特に移行期)

 ・人に対する信頼性回復

 ・毒物的な物の給与や発生の回避と緩和

エ.栄養供給の原則遵守

 ・安全量以上の繊維の安定給与

 ・できるだけ多い乾物摂取の実現

 ・各栄養要素のバランスある設計と採食

 ・ミネラルの適バランス割増し給与

 ・ビタミン等、抗酸化剤の確実な給与

 ・糖、黄体強化脂肪酸、アミノ酸を意識した給与

(2)初回発情を確認

 いくら予測的な発情チェックといっても、それは前回の発情日が分かっていればこその話です。元気な牛なら通常来るであろう分娩後20〜40日の初回発情を見つければこそ、次のスケジュールが展開できるわけです。

 ですから、40日までに発情が不明なら、見逃しの可能性があっても臆せず診療してもらうクセを持つべきです。

 ともかく分娩後20日過ぎから、真剣に、毎日、初回発情の発見に精を出すのは、酪農のイロハの作業でしょう。

(3)子宮の早期回復

 繁殖結果は、以下の活性度との関連性によって決まります。

 ・繁殖中枢

 ・繁殖関連ホルモン放出腺

 ・卵巣

 ・子宮

 最終的には、卵管や子宮本体における卵や精子の移動、受精環境、受精卵の移動、浮遊受精卵の環境、受胎環境、胎子の発育環境のいわゆる子宮環境が活力に富んでいることが大切です。特に早付けを成立させたい場合は極めて大切です。

 妊娠は子宮を大きく拡大します。また、分娩時において、子宮はほぼ必然的に大なり小なりの細菌汚染を受けるはずです。それ故に、分娩後、なるべく早く、子宮が空胎時の状態に縮小することと、発病させることなく子宮を清浄化することは早付けのためにははずせない条件です。

 たいていは乳牛本体の健康度が高ければ、早い時点で回復します。しかし、体調が不十分だったり、筋肉の収縮に関わることがうまくゆかなかったり、ストレスや抗酸化成分の不足などにより免疫力が落ちたりすると、子宮内膜炎になったりして、回復が相当に遅れます。その時は的確なタイミングで子宮の清浄化処置をしてもらわねばなりません。

 昨年連載の最終号の繰返しになりますが、以下の場合は子宮の汚染が長引く傾向のようですので、診療してもらうべきでしょう。

 ・分娩時とその後の乳房の張りが弱い

 ・予定日より大分早くか遅くかで分娩した

 ・過肥だった

 ・双子出産した

 ・難産した

 ・強制出産した

 ・流・早・死産した

 ・乳房浮腫になった

 ・産褥熱が出た

 ・後産が停滞した

 ・悪露が長く出た

 ・乳房炎になった

 ・大きな体重の減少があった

 ・暑熱、寒冷などのストレスを強く受けた

 ・代謝障害を受けた

 ・その他、怪我や疾病をした

(4)種付け開始の時期

 早付けの場合、初産牛で分娩後40日頃から、2産牛以上で45日頃から種付け開始を予定したいものです。ただ、それをすべてに当てはめるのはいただけません。体調や泌乳能力や季節性や飼料の品質などを配慮して、5日か1週間単位で開始日を遅らせる、そんな個体対応が必要です。

 平均で45日から開始体制に入れたとしても、発情周期が21日なので、全体の種付け日の平均は55日くらいになります。それに1発情サイクル分を足すと、2回目の種付け日の平均は75日頃、3回目のそれは95日頃、4回目は115日頃…と展開します。実態はそんな美しくありませんが、感覚的にはそんなところです。

 繁殖に関わる総合管理力が高いとして、45〜65日の間に発見できる発情は70%くらいでしょう。その受胎率が50%なら、11ヵ月の分娩間隔牛が全体の35%得られることになります。じゅうぶんな成績と言えます。

 この早付け技術が早期に定着すれば、経営再建はかなり現実味を帯びてきます。

(5)発情再発の確認と早め妊鑑

 仮に、分娩後55日で授精したとします。しかしそれが受精していなかったら次の発情は75日頃、その次は95日頃になります。ちょうど、分娩前後のストレスを強く受けた時期から2〜3ヵ月後に当たります。卵子の受精能が最低化しやすいタイミングになります。分娩3週間くらい前の低ストレス期に発生した原始卵胞が発育して分娩後55日に排卵した時の見事な発情に惑わされて、その時授精した後、次の発情が来なかったら、再発なし、受胎したと油断してしまいます。いかに受胎条件の高い時期であっても、授精タイミングなどではずれることも結構あります。そして、95日の次、115日頃突然の見事な発情を見せられ、空胎だったことに気づかされます。

 115日の2〜3ヵ月前は、分娩後40日前後で、その時期は、ボディコンディションは最低でもストレスはかなり軽減し、泌乳と栄養摂取もバランスされています。すなわち、やせてはいても大きな体重減少はなく、その時できた原始卵胞は健全な状態なわけです。それが発育して排卵される115日頃の卵子は、発情も強くなり、受精しやすいものなのです。

 飛んできた発情と前の時の発情を、21で割り、大体割り切れるなら、途中に発情があった証拠になります。早付けした後の発情は弱くなる時期のものですから、再発情の確認をより強化すべきなわけです。軽くあった発情を2回も見逃したことになります。つなぎっぱなしの管理では特にこれが重要です。また、分娩後50〜60日頃に来た発情を、諸般の事情で種付けせずに、立派な発情だから次も大丈夫と飛ばすと、現実は全く発情が分からなくなり、長期の初回種付けなし状態になることが良くあります。分娩時において過肥状態の高能力牛に良くあるケースで、注意を要します。

 また、授精した後、1回飛んだと見せかけて、1週間とか10日とか2週間とか遅れて、変な間隔で再発する場合は、膿腫とか、ホルモンアンバランス、さらには子宮内膜炎などによる受精卵になった後の早期胎芽死の可能性があるので、すぐ診療を受けるべきでしょう。ただし、時にはニセ発情?のこともあるようなので留意してください。

 いずれにしろ、技術者の技量にもよりますが、再発がなければ、可能な限り早い時点で妊娠鑑定を受け、マイナスかも知れない可能性をチェックするべきです。プラスを求めしつこく確認作業しないという条件で。胎子が落ちても困りますので。特に、早付けの後の妊鑑は、先の説明の理由により、しっかりと早めに確認することが、長期空胎牛を減らすことにつながります。

(6)高産乳−発乾乳とゆとりの乾乳期間

 ピーク(分娩後2ヵ月)で50kg以上出る牛が、分娩間隔11ヵ月でとまるとします。次の分娩予定の2ヵ月前に乾乳するとして、乾乳時の乳量はどの位か?。ピークから乾乳までは7ヵ月間です。1ヵ月に3kgずつ減乳するので、その間に21kg乳量が落ちます。すると、乾乳時の乳量は30kgくらいです。

 飼養管理技術の変化と分娩間隔の短縮は、このような牛を多く出します。35〜40kgで乾乳という牛も出てきます。このような牛を、泌乳量をかなり減らしてから乾乳しようと、水やエサを制限しても、たいていはわが身を削って乳を出し、やせてしまうのがおちです。これではなかなか乾乳できないと、ずるずる乾乳期間を縮めるのは、次の乳期を最悪に導き、何のための早付けか意味不明になります。

 何の泌乳制限もしないで、高産乳状態のまま、予定の乾乳日に一発であげ、しかも乳房炎コントロールもできる…そんな技術をあっさりやり遂げる意志と技術を持ちたいものです。

 短い分娩間隔の時の乾乳期間には、特別な配慮が必要です。なぜなら、低泌乳状態による体の回復期間がないからです。肝臓、ルーメン壁、乳房、肢蹄などの回復に気を配り、普通より多めの期間をとります。

 普通受胎牛の55日位を基準にし、60、65、70日の区別くらいで牛に合わせます。空胎日数、泌乳水準、体格、ボディコンディション、体調、肢蹄の状態、乳房の健康、胎子の種類などを配慮します。決して、60日以内にならないよう気を付けます。

(4)意識的、予測的な管理

 記録システムをしっかりした理由の伴う内容にするべきです。そして、繁殖に関わる有益なデータを、予測的、計画的な管理に供せられるよう利用したいものです。

 くわしくは、昨年連載の最終回に一例を解説してあるので、参照下さい。

 いずれにしろ、このことは極めて大切な事です。

(5)繁殖管理作業の専門化

 最も肝腎な酪農技術分野を、あまりにも片手間状態で片付けていては、なにをかいわんやです。

 特に繁殖データの記録や分析は本格的な作業として時間をしっかり取ることが必要です。

 また、発情発見を欠かせない作業として、完全に日常の中に組み入れるようにしてください。

 といっても、なかなかそうはならないのが現実です。不思議です。最も容易に利益誘導できるこの作業を、なぜないがしろにするのでしょうか?

 是非、これからは、専門の独立した、重要な作業と位置づけてくれればと願っています。

 繁殖はこの位にします。

(筆者:北海道十勝北部地区農業改良普及センター・主査)