最近の養豚飼養管理技術(5)

─ 豚の人工授精技術を中心として ─

伊東 正吾・保科 和夫

 最近利用率が大変高まっている豚の人工授精技術と周辺技術について述べたいと思います。

1. 豚人工授精技術の歴史

 家畜の人工授精技術は、経営的および育種的に極めて重要な役割を果たしていることは明白です。特に牛では、凍結精液による 人工授精の普及率は90%以上に達しています。

 豚の人工授精は、1930年代に旧ソビエト連邦で研究を開始したことが始まりです。日本では、1938年から本格的に研究が開始され、以後10年程度の間に伊藤、丹羽、工藤らの精力的な研究により人工膣や注入器などが開発され、世界的に誇る技術が得られています。

 わが国では、豚の人工授精は1960年代に一時かなり普及したのですが、種々の理由から衰退しました。しかし最近、液状精液とともに凍結精液の技術革新が進み、経営規模の拡大と一貫経営の増加に伴って利用率が高まっています。

 今回は、豚人工授精のメリットやデメリットなどについては既に多くの記述がされていますので省き、人工授精技術の実際について述べたいと思います。

2. 豚精液の利用法

 豚の人工授精を行うに当り、液状精液と凍結精液の2種類から選択します。

 液状精液を利用する場合、(1)市販精液を利用する方法、 (2)自分で精液を採取・処理して実施する方法、さらに(3)自然交配と併用する方法のいづれかを選ぶことになります。

(1)採精(精液採取)

 豚の精液は、基本的には採取者の手でペニスに直接圧力をかける用手法で採取します。

 精液を自家農場で用意する場合は、使い捨て手袋と膠様物濾過用ガーゼなどを装着した採取瓶と瓶の加温容器を用意します。また、採精室または採精場(豚房)には擬牝台も必要です。なお、精液採取瓶については使い捨て製品が一部で流通してますので、比較的利用しやすくなっています。

(2)採精場への誘導

 雄豚の採精場への誘導は、数回の調教で容易となり、また擬牝台の利用は、雄や精液の匂いが付着していれば、比較的即座に乗駕するケースが多くみられます。

 包皮内の尿溜りの尿の精液への混入は、極力避けなければなりません。そのため、射精開始までに採精者が匂皮全体を絞るようにして排出させておくことが大切です。

(3)ペニスの洗浄と採精

 雄豚が擬牝台に乗駕し、ペニスを出し入れし始めたら、ペニスの先端で螺旋状の溝部分に採精者の指を滑り込ませ、軽く圧力をかけながら握り込みます(写真1−AB)。

写真1-A 用手法による精液採取

写真1-B 精液採取時の握り方
写真では中を見せるために中指〜小指を開いているが、
握り込んだ状態で採精時は写真1-A

 ペニスを把持したのち、体温程度に加温した滅菌生理食塩水により、包皮口付近から把持する手まで洗い流します。この処置により、細菌やその他の汚れが精液に混入するのを、 極めて効果的に減少させることが可能となります。

 豚の射精時間は他の家畜と比べて大変長いのですが、基本的には、精子濃度の高い濃厚部分のみを採取します。なお、濃厚精液を採取した後も、牡豚の射精が終了するまで射出させてやることも調教の一つです。

(4)精液処理と注入法

 採取した精液は、直ちに一般性状検査を実施し、市販または自分で調合した希釈液で希釈したのち保存します。なお、希釈保存精液には必ず抗生物質(アミノ配糖体系が有効)を添加することを心掛けます。これにより、5〜15℃で保存した場合、7〜14日間は良好な精液性状を維持したまま保存できることが確認されています。

 また精液注入の際には、衛生面にじゅうぶん注意して実施することが重要です。具体的な方法については、各種技術書があるのでそちらをご覧下さい。なお、「豚凍結精液利用技術マニュアル」:丹羽太左衛門博士監修(日本家畜人工授精師協会刊行:1989)においても、写真解説で著者が示していますので、参考にしていただければ幸いです。

3. 液状精液委夜人工授精

 豚の液状精液は、かつては保存可能期間が3〜5日程度であったため、精液採取後比較的短期間に使用することが必要でした。そのため、精液の輸送と着荷後保管期間の関係から若干利用性に問題があり、豚の繁殖管理技術としてじゅうぶんな地位を確立するに至りませんでした。しかし、最近は物流面で宅配輸送システムが充実し、さらに希釈保存液が改良され7〜14日間受精能を良好に維持できるようになったため、その利用技術が急速に普及しました。また、飼養頭数の少ない農場のみならず、大規模農場においても種雄豚の導入経費を抑制し、授精に関する業務の省力化を図るため、人工授精利用率が高まっています。

 このような情勢から、最近では民間の精液供給会社や公共の関係施設からも宅配便などにより、容易に購買できるようになってきました。

(1)液状精液の輸送方法と精子活力

 液状精液宅配のポイントの1つは、その梱包方法にあるとも言えます。5〜15℃の温度を維持しながら生産農場に配送する方法としては、発砲スチロール容器と保温または冷却資材を組合わせて利用することにより、その実用化が可能となりました。

 また、交配に供用するまでの低温保存方法としては、比較的高価な恒温器を用いなくとも、水道水と鑑賞魚水槽用簡易ヒーターの利用(写真−2−AB)により適温を保ち、7〜14日間は比較的良好な精子活力を維持できることが認められています(表−1)。

写真2-A 簡易ヒーター装着状況

 

写真2-B 水道水と簡易ヒーターによる液状精液保存状況(保科原図)

表−1 簡易保存容器による保存試験
保存日数 7日間 14日間
保存方法 簡易* 15℃** 簡易 15℃
精子活力(+++%) 75.0 73.8 55.0 65.0
正常精子率(%) 84.4 80.9 75.2 78.3
(保科.1999)
n=4、7・8月実施 *:簡易保存容器、**:15℃保存庫
採取日:活力85.0、正常精子率91.6

 このように、希釈保存液の改良と簡易な低温保存方法の確立および宅配便輸送網の利用により、液状精液による豚人工授精技術の実用化と普及が急速に進んでいます。

(2)液状精液による受胎性

 液状精液を利用した農場の繁殖成績は、受胎率(分娩率)80〜85%、産子数10〜11頭、子豚生時体重1.4〜1.6kg程度と言う成績が多いことから自然交配に遜色ないレベルに達していると思われます。

 保科ら(1999)は、4種類の希釈液による14日間低温保存性を検討した結果、7日目までは希釈液による差は認めていませんが、14日目ではモデナとマルベリが良好であることを認めています(表−2)。これにより、経済性等を考慮した上で、モデナ希釈で15℃保存した精液を用いて受精試験を実施し、受胎率90.9%、平均産子数11.8頭の成績を得ています(表−3)。また、実際の生産農場に配送して野外受精試験を実施したところ、農場によって差は認められるものの、優良な農場においては受胎率83.3%、平均産子数10.3頭と、ほぼ実用レベルに達していることを認めています(表−4)。

表−2 精液希釈液による保存後精子活力
希釈液 モデナ マルベリ BTS ブッシュバイラ
15℃ 3日 80.0 79.6 75.8 79.2
保存 7日 79.6 79.2 75.8 78.8
14日 63.8C 58.3A 52.1D 37.9B
5℃3日 66.3 69.4A 62.5B 69.4A
保存7日 50.6A 59.4B 41.9C 53.8E
14日 17.5 28.8A 13.8B 17.5B
(保科.1999)
37℃加熱後の精子活力(+++%)、採精日:88.8%
AvsB、BvsC、BvsD、CvsD、CvsE:P<0.01

表−3 保存精液による場内授精成績
保存温度(℃) 15 5
注入温度(℃) 15 5 37**
供試頭数(頭) 11.0 05.0 09.0
受胎率(%) 90.9 20.0 44.4
平均産子数(頭) 11.8 06.0 06.5
標準偏差 02.3 03.4
保存日数(日)** 01.6 05.4 05.4
(保科.1999)
*:注入時平均活力64.0+++%
**:初回種付までの日数

表−4 宅配精液による授精成績
農  場 A B C 全体
供試頭数(頭) 18.0 18.0 14.0 46.0 96.0
受胎率(%) 83.3 72.2 42.9 76.1 71.9
平均産子数(頭) 10.3 08.9 08.5 10.1 09.8
標準偏差 02.1 01.6 02.2 02.9 02.5
(保科.1999)

4. 凍結精液による人工授精

 精子保存利用の究極的利用法は、半永久的に保存が可能であり、必要な時に必要な量を利用できる凍結保存にあると言えます。

 伊東ら、(1990)は、長野県内の多くの養豚場の協力により、1986年から4年間で638頭を供試して凍結精液による野外授精試験を行い、その実用性を検討しました。

(1)野外授精試験と受胎性

 野外授精試験の実施に際し、豚では高い受胎率と産子数が同時に要求されるため、凍結融解後の精子活力が低く、生存時間も短い傾向にある豚凍結精液による人工授精では、自然交配や液状精液の場合に比べて、より排卵に近い時期に授精が重要と考えました。そこで授精時期は、発情開始推定時刻から24時間以内の授精を見合わせ、24時間後に6〜12時間間隔で2回授精する方式(図−1)を実施しました。

図−1 豚の人工授精時における授精時期と受胎性(Glossop,1991を改変)

 受胎率は、供試豚全体では63.9%であり、従来の凍結精液による受胎率が40〜60%であったことから、比較的良好な成績であることが確認されました。なお、経産豚と未経産豚の間には受胎率の差が明確に認められ、経産豚(66.4%)が未経産豚(53.7%)より有意に高い受胎成績でした(表−5)。この成績を「豚の繁殖の実態調査」(農水省畜試:1986)と比較すると、自然交配の場合(82.0%)より低いものの、液状精液を用いた場合(68.1%)とは大差ないことが認められました。

表−5 凍結精液による受胎成績
年度 未経産豚 経産豚 合 計
n 受胎率 n 受胎率 n 受胎率
1986 019頭 42.1%a 101 70.3b 120 65.8
1987 029 48.3a 125 68.0b 154 64.3
1988 018 50.0a 147 62.6b 165 61.2
1989 057 61.4a 142 66.2b 199 64.8
合計 123 53.7A 515 66.4B 638 63.9
(伊東.1990)
n:分娩頭数、 a VS b:p<.05、
n:分娩頭数、 A VS B:p<.01

 未経産豚の受胎率が低いことについては、未経産豚は、発情周期と発情持続時間の変動幅が大きい場合が多く、授精適期が見極め難い傾向にあることが一因と思われます。

 平均産子数は、未経産豚(7.3頭:2〜13頭)より経産豚(8.8頭:2〜17頭)が有意に多く、全体では8.6頭(2〜17頭)でした(表−6)。この成績は、自然交配(9.9頭)および液状精液を用いた場合(9.5頭)と比べて1.3〜0.9頭低い傾向でした。しかし、凍結精液を用いた場合の産子数は、自然交配の場合より3頭程度低下するとされていたことから、自然交配および液状精液による産子数に近づいたことがうかがわれました。

表−6 凍結精液による産子成績(頭)
年度 未経産豚 経産豚 合 計
n 産子数 n 産子数 n 産子数
1986 08 7.5±2.8
(3〜11)
068 9.4±2.9
(3〜17)
076 9.2±3.0
(3〜17)
1987 14 7.4±3.2
(2〜13)
083 8.9±2.9
(3〜15)
097 8.7±3.0
(2〜15)
1988 09 8.1±3.2
(4〜13)
085 8.4±2.6
(2〜13)
094 8.4±2.6
(2〜13)
1989 34 7.1±2.1A
(3〜11)
090 8.7±2.9B
(2〜16)
124 8.2±2.8
(2〜16)
合計 65 7.3±2.6A
(2〜13)
326 8.8±2.8B
(2〜17)
391 8.6±2.9
(2〜17)
(伊東.1990)

n:分娩頭数、 X±SD、( ):範囲、A VS B:p<0.01

 事実、野外授精試験を実施した一部の地域では、経産豚のみを供試した場合、受胎率80%以上、平均産子数9.5頭以上の極めて良好な成績も認められています(表−7)。

表−7 S地区の凍結精液による授精成績
年度 未経産豚 経産豚 合 計
  n 受胎率
(産子数)
n 受胎率
(産子数)
n 受胎率
(産子数)
1986 0 31 80.5
(9.5±2.7)
31 80.5
(9.5±2.7)
1987 0 31 87.1
(9.7±2.5)
  87.1
(9.7±2.5)
1988 05 40.0
(8.0±1.4)
15 66.7
(10.0±1.9)
  60.0
(9.7±2.0)
1989 07 42.9
(8.0±3.0)
16 62.5
(9.9±2.7)
  56.5
(9.5±2.8)
合計 12 41.7
(8.0±2.2)
93 75.3
(9.7±2.5)
71.4
(9.6±2.5)
(伊東.1990)

n:授精頭数、産子数:平均±標準偏差

 これらの成績より、豚凍結精液を利用した人工授精技術が、ほぼ実用化レベルに達したことが認められました。

 なお、豚精子の凍結保存・利用方法については、農水省と8県の畜産試験場が実施した協定試験で得られた成果を集約して各担当が執筆した、前述の「豚凍結精液利用技術マニュアル」に集約してありますので参考にして下さい。

5. 受精(交配)適期

 交配適期は、今までの養豚経営の中では自然交配が主流であったことから、雄豚にみつけてもらう場合が多い状況でした。しかし、規模の拡大と人工授精の普及度が高まるにつれ、管理者が主体となった交配適期判定技術の確立が重要であると思われます。

 なお、交配適期に関する基本理論については、本セミナー第2回(本誌No.117)に示してありますので参照してください。

6.  交配適期を簡易に推定する方法

 牛では、卵巣状態を直腸検査によって触診して交配適期を判断します。いっぽう豚における直腸検査は、技術的には可能で、そこから得られる情報は確実で量も多く、臨床的価値は高いのですが、実際に実施するとなると、大規模化した農場では労力的に難しいのが現実です。しかし、排卵開始時期は発情開始から30〜40時間後であり、したがって発情開始時期を推定できれば、授精適期をより絞込めるものと考えられます。

 生産現場において、試情に頼らない簡易な発情鑑定方法としては、(1)従来から実施している外陰部徴候と挙動から判定する方法、(2)子宮頚管内の電気的変化を指標とする方法、(3)桑原(1995)が最近提唱している、離乳後における乳房と外陰部の形態的変化により推定する方法があると考えられます。

(1)外陰部発情徴候による判定方法

 外陰部所見と挙動から判定する方法は、個体によっても徴候の出方が異なり、またストール飼育が主体の昨今は、外陰部徴候の不明瞭化も指摘され、逆に熟練度が要求されます。

(2)電気的判定法

 子宮頚管または膣内電気伝導性または抵抗性は、特に発情期において大きく変化することが知られています。

 松川ら(1982)は、子宮頚管電気伝導度は発情開始の2日前から急激に上昇を開始し、発情開始日に最高値を示した後、下降することを認めています。コーら(1989)は、膣内電気抵抗値は発情開始日またはその前日に最低値となり、その後上昇することを示すこと、ならびに、最低値の時点から24時間または36時間後の1回授精で、自然交配と変わらない良好な分娩率と産子数が得られたことを認めています。

 筆者ら(1994、1998)は、深部膣内電気抵抗値を測定し、黄体期には高い抵抗値であるが、発情徴候が発現し始める時期には急激に低下し、発情開始の1〜2日前に最低値となり、以後急激に上昇することを認めました(図−2)。このことを基礎に、測定した抵抗値が最低となった日を基準(Day0)とし、翌日(Day1)から3日後(Day3)までにおいて、所定日に1回のみ授精を行うことより、本方式による授精適期を検討しました。

図−2 周排卵期におけるVER値の動態

 その結果、発情期間中連日自然交配した場合(85.7%)と遜色ない受胎率が得られたのは、Day2(83.3%)でした(表−8)。受胎率に関して結論を出すには、さらに例数を重ねる必要があると思いますが、参考になる成績だと思われます。

表−8 豚の深部膣内電気抵抗値を指標とした交配時期と授精成績
区分
発情期間
(日)
精子活力
(+++%)
受胎率
(%)
妊娠期間
(日)
総産子数
(頭)
対照 7 2.1±0.4 91.4±2.4 85.7 114.0±0.6 11.2±2.6
Day1 9 2.3±0.7 88.0±2.9 77.8 114.7±1.5 12.4±2.0
Day2 12 2.4±0.7 89.8±5.4 83.3 115.3±1.1 10.1±2.4
Day3 7 2.3±0.5 88.4±4.2 71.4 115.2±0.4 11.4±2.3
(伊東.1998)
対照区:発情期間中連日自然交配
試験区:所定日に1回のみ授精
Day*:深部膣内電気抵抗値の最低日(=Day0)からの経過日数
平均±標準偏差、各水準間に有意差を認めず

 また、産子数については、Day2において、1腹に4頭という少ない例がみられたため平均値が若干低いのですが、試験区間に有意な差はなく、比較的良好な結果であると思われます。

 この技術については現在も試験中ですが、測定時間は極めて短く、測定者によるバラツキも少ないことから、例数がまとまった時点で実用性について判断したいと考えています。

(3)離乳後乳房と外陰部の形態による判定

 桑原(1995)は、離乳後の外陰部と乳房の 形態(枯れ具合)でホルモン状況が推測できるとしています。また、乳房が程好く枯れ、外陰部の腫張が最高となるとともに、粘液の漏出が認められる時期が授精適期であるとしています(図−3)。

図−3 離乳後乳房態変化と授精適期

7.  人工授精と波及効果

(1)豚精液と病原体予防効果

 衛生的に採取した精液の中には、豚において問題となるマイコプラズマ、ボルデテラ、パスツレラ、アクチノバシラスなどの病原細菌の混入が少ないことを曽根ら(1992)が報告しています。また、精液を希釈処理する際に、感受性の高い抗生物質を添加することにより、精子の良好な保存期間を長く保つことができます。このことは、人工授精による豚群能力の改善にとどまらず、清浄性の維持と推進にも有効となり得ることを示唆しています。

(2)人工授精による経済効果

 人工授精の活用により、種雄豚の利用率を著しく高めることが可能となります。通常は1回の採精により約10回分(1発情2回種付では種雌豚5頭分)の授精が可能となることから、武田(1994)は、単純計算で種雄豚の繋養頭数は5分の1程度に減少することができ、自然交配と人工授精の併用でも40%前後の飼養頭数を削減できると試算しています(表−9−A〜C)。その結果、母豚330頭、種雄豚25頭飼育の一貫経営農場においては、その導入経費と繋養に要する費用および労働費を基礎に計算すると、種雄豚を5頭削減した場合は約70万円、10頭の場合は約170万円の経費が節減できるようです。しかし、実際の飼養の際には、種雄豚房の確保やふん尿処理なども関連し、さらには交配業務の省力化により、余剰労力を他の業務に向けることも可能になることから、その波及効果はさらに大きくなるものと思われます。

表−9 自然交配と人工授精併用によるコスト低減効果

表9−A 母豚330頭一貫経営の交配コスト(雄25頭)

項目 算 出 基 礎 金 額
モト畜費
育 成 豚
飼 料 費
諸 経 費
労 賃 1
労 賃 2
200,000円/1頭 経済寿命3年 更新8頭/年
8頭 60日 飼料2.5kg 43円/kg
25頭 1,000kg 43円/kg
水道光熱費 衛生費 他 15,000円/時
管理 6分/1頭 1,500円/時〔年 912時間〕
交配 1,305回 20分/回 1,500円/頭〔年 435時間〕
1,600,000円
51,600 
1,075,000 
375,000 
1,368,000 
652,500 
合 計   5,122,100 
  種雄豚1頭換算
1回の交配換算
204,884円
3,925 

表9−B 自家採取保存の精液コスト

項目 算 出 基 礎 金 額
保 存 液
備   品
消 耗 品
労   賃
希釈167ml/回 希釈液・純水他 4円/ml 154頭
擬牝台・顕微鏡・加温板・冷蔵庫等 30万 耐用7年
注入器 採取瓶 スライドガラス等
保存 154頭×40分 1,500円/時 〔年 103時間〕
102,872円
38,571 
30,000 
154,500 
合 計   325,943 
  1回の交配換算

434円

表9−C 自然交配とA氓フ併用によるコスト低減効果

(1) 現状の交配1回当りコスト
  自然交配   3,925円 (5,122,100円÷1,305回)
  人工授精 434円 (325,943円÷751回)

(2) 人工授精の併用で、種雄豚を削減した交配コストの試算(円)
削減頭数 自然交配のコスト 人工授精のコスト 合 計 1交配当り 効 果
15頭 4,097,680 325,943 4,423,623 3,390 1,698,477
△ 10頭 3,073,260 325,943 3,399,203 2,605 △ 1,722,897
注 1)種雄豚25頭に対して5〜10頭削減
  2)1交配当りコストは、1,305回で除した
  3)効果は現状の自然交配の費用総額に対する差額

(武田,1994)

 

(筆者:長野県畜産試験場・主任研究員・研究員)