最近の養豚飼養管理技術(4)

─ 豚の肥育技術、ウェットフィーディング ─

伊 東 正 吾

 今回は肥育豚の発育特性と、それに基づいた管理技術について若干述べた後、最近多くの農場で利用されているウェットフィーディング技術に焦点をあてて解説します。

1. 肉豚の発育特性と基本管理のポイント

(1) PSE肉(ふけ肉)に関与する不良遺伝子(RYR-1遺伝子)を保有しない発育の揃ったモト豚を肥育する。

(2) できるだけ性別の群管理をする。去勢豚は雌より4〜5日発育が早く、背脂肪が厚くなりやすい。

(3) 性別管理ができない場合は、腹ごとまたは2腹程度にまとめる。

(4) 発育は制限給餌より不断給餌が良いが、飼料効率は逆である。群飼では制限給餌の方が食込みが良い。

(5) 肥育豚房の群の再編成は行わない。

(6) 適正な飼育密度とし、まだ2〜3頭入れられる程度が発育良好となる。

(7) 産肉生理として、70kg程度までは筋肉生産が主体で、それ以降は脂肪生産が盛んになる(図−1)。したがって、肥育前期と後期の給与飼料の栄養価は当然異なる。

図−1 肥育豚の体重と筋肉・脂肪の生産量

(8) 換気、温湿度の管理にはじゅうぶん注意する。

(9) オールイン、オールアウトと消毒の励行が、疾病予防に極めて有効である。

(10) 発育不良豚の見切りを早く行い、少し小さくても早めに出荷することが必要。

2. ウェットフィーディングとは

 ウェットフィーディングは、セルフフィーダーの飼槽(食べ口)内に給水器をセットした、「ウェットフィーダー」と呼ばれる給餌器を用いて、子豚および肥育豚を飼養する方法です(図−2、写真1〜4)。

図−2 ウェットフィーダーの構造

 わが国においては、1988年ころから輸入品や国産品の本給餌器が市販されています。

 この飼養法は飼料や水のこぼしが少なく、発育も良く、また、本給餌器への交換取付けにさほど経費や時間がかからないことなどをセールスポイントとして、その特性もじゅうぶんに解明されないまま、給餌器メーカー主導で急速に普及しました。

 長野県畜産試験場養豚部の宮脇耕平氏(現:肉用牛部長)はこのような情勢のなかで、本飼養法の特性解明と飼養技術の体系化を目的に研究を行い、多くの成果を得ています(宮脇氏は日本養豚学会賞・丹羽賞を1998年に受賞)。

 次に、その成果の紹介とウェットフィーディングによる飼養技術のポイントについて述べたいと思います。

3. ウェットフィーディングは明らかに節水効果がある

 この飼養法の特性の一つとして、水のこぼしが少なく節水効果があるとされていましたが、その具体的データは少なく、節水効果の発現する温度条件も明確ではありませんでした。そこで、夏季と冬季に飼養試験を行い、水消費量に及ぼす気温など各種気象要因の影響について究明しました。

 表−1で示したように、水消費量が季節によって異なるのは対照区とウェット区ともに同様ですが、夏季肥育での1頭当りのウェット区の水消費量は、従来の分離給水で飼養した対象区の39〜45%にすぎず、1日1頭平均消費量も有意に少なく、明らかな節水効果が認められました。

表−1 肥育季節による豚の水消費量

 気象要因と水消費量との間には、夏季肥育において有意な関係が認められます(図−3)。特に最高気温との相関が高く、対照区では気温の上昇にしたがい水消費量は明らかに増加していますが、ウェット区ではほぼ一定の消費量です。


自然落下型ウェットフィーダー
飼料の落下状況と左下は給水チート

ポイント1
  1. ウェットフィーディングの節水効果は季節によって異なり、日平均気温で10℃(日最高気温では15℃)以上の季節において発現する。
  2. この節水効果は従来飼養に比べ55〜61%期待でき、この主因はこぼし水が減少することである。
  3. したがって、最終的には汚水量の減量にも効果のあることが示唆された。
 

図−3 夏季の日最高気温と水消費量の相関


(宮脇、1994)

図−4 日平均気温とウェットフィーディングの節水効果


(宮脇、1994)

 結論としては、日最高気温では15℃、日平均気温では10℃以上の温度帯において、ウェット区が対照区より有意に少なく節水効果が認められ、その効果は気温の上昇とともに拡大します。しかし、これ以下の温度帯においての節水効果はありません。

4. ウェットフィーディングは飼料節約が期待できる

 この飼養法の経済性評価で最も重要となる発育、飼料要求率(FC)および枝肉成績については、多くの研究者により報告されていますが、その評価は必ずしも一致していません。そこで、本飼養法のこれらに及ぼす影響と、給餌器1頭口当りの飼養頭数による影響について検討しました。

 この飼養法の1日平均増体量(DG)に及ぼす影響は、有意とはならなかったものの、ウェット各区が対照区より優れる傾向が認められます(表−2)。去勢雄では区間の差は全くありませんが、性により異なる傾向があり、雌ではウェット各区の発育が対照区よりも優れ、発育改善傾向も優れています。さらにDG、飼料消費量、飼料要求率は1頭口飼養頭数に影響されることも明らかです(表−3)。すなわち、ウェットフィーダー(WF)1頭口当りの飼養頭数が増加するにしたがい、DGは低下しバラツキも増大する傾向です。

表−2 1日平均増体重に及ぼす給餌器の影響   (単位:g)

表−3 発育および飼料利用性に及ぼす1頭口飼養頭数の影響

 飼料消費量について、WF15頭区は7.5および5頭区と比べて、最も少ない傾向が肥育前期または後期に認められ、飼料摂取量に問題のあることが分かりました。飼料要求率への1頭口飼養頭数の影響はありませんが、WF5頭区はWF15および7.5頭区より良好な傾向を示しています。


切り出し型ウェットフィーダー
正面中央がタッチ板、右下には給水チート
  
ポイント2
  1. 発育改善効果は有意ではないが、従来飼養法よりも優れている傾向である。
  2. 発育改善傾向は、去勢雄よりも雌において明らかである。
  3. 飼料要求率は良好で、6〜9%の飼料節約効果が期待できる。
  4. 発育、飼料要求率とも1頭口飼養頭数によって影響され、飼養頭数の増加に伴い成績は低下する傾向がある。
  5. 枝肉にはほとんど影響は認められない。ただし、雌においては脂肪厚傾向となる。

 なお、こぼし量を含めた飼料消費日量は、ウェット給餌器間には有意の差はありませんが、ウェット各区が対照区よりも3%程度少ない傾向です。 飼料要求率は、肥育前期および後期ともウェット各区が対照区よりも優れており、特に肥育後期において良好でした。

 これらのことから、本飼養法によって肥育期全体で6〜9%の飼料の節約が可能と推察されています。この効果は、こぼし量の減少によるところが大きな要因です。

 枝肉の背脂肪厚、腹脂肪厚、審査得点および上物率については、区間の有意差や一定の傾向は認められていません。しかし、雌においては、ウェット各区の背脂肪が対照区よりも厚くなる傾向が認められ、発育成績と一致しています(表−4)。

表−4 枝肉成績に及ぼす給餌器の影響

5. 適正飼養頭数は1頭口当り8〜10頭程度

 この飼養法は、飼料と水とを同時に摂取できるため、従来飼養法とは異なった採食行動を取るものと想定されました。また実際、採食時間が短縮されると言うことです。このことから、本飼養法では従来法よりも、1頭口当りの飼養頭数を増加させることができると考えられていましたが、その指標は明確でありませんでした。そこで、本飼養法における適正飼養頭数の推定を目的に検討しました。


  1頭口用の自然落下型ウェットフィーダー
フィーダーでの採食状況

 その結果の一部を表−5に示しましたが、1日の総採食時間は対照区の約60%、1回平均採食時間が対照区の約50%と、いずれも有意の短縮がみられます。なお、採食回数には有意差はありません。

表−5 採食行動に及ぼす1頭口飼養頭数の影響

 飼槽利用率と飼槽空き時間率は、1頭口飼養頭数による影響が大きく、飼槽利用率は、1頭口飼養頭数の増加にしたがって高まり、特にWF15頭区は対照区、WF7.5および5頭区より有意に高い傾向です。

 平均飼槽空き時間率は、WF15頭区が対照区よりは長いものの、WF7.5および5頭区より有意に短かい傾向です。このことから、平均飼槽利用率(y)と1頭口飼養頭数(x)の間には有意の一次回帰式y=8.79+3.27xが成立し、また、この回帰式から対照区15頭飼育における平均飼槽利用率(40.6%)に相当するウェットフィーダー1頭口飼養頭数は9.7頭と推定されます。

 総合的に判断すると、WF15頭区とWF7.5および5頭区との間に有意差が認められ、1頭口15頭飼育では多過ぎ、7.5頭程度が適正と判断されました。

ポイント3
  1. 1日の総採食時間は従来飼養法の約60%に、1回平均採食時間は約50%に短縮した。これは本飼養法の特有の効果である。
  2. 採食回数に有意差は認められない。
  3. 飼槽の利用性は、1頭口当り飼養頭数の影響が大きい。
  4. 飼槽利用率と1頭口飼養頭数との間には、有意の1次回帰式が成立し、頭数の増加に伴い飼槽利用率は直線的に増加する。
  5. 飼槽の利用性、採食行動および発育性から、本飼養法の飼養頭数は1頭口当り8〜10頭が適正。

 結論として、本飼養法の適正飼養頭数は、1頭口当り8〜10頭程度であることが確認されました。

6. 最適加水混合比率は

 この飼養法の採食行動に変化をもたらす要因として、採食速度が想定されたため、その関連性を検討しました。

ポイント4
  1. 飼料への加水により、採食速度は有意に速まり、増体にしたがい、肥育後期に著しく速くなる傾向である。従来法の1.6〜2.1倍となる。
  2. 採食速度が最も早まる加水比率は、風乾物飼料1に対して水1.3〜1.8(飼料水分62〜69%)であり、この比率が最適加水混合比率と判断された。
  3. 加水比率の違いによる採食速度の差は、増体にしたがい大きくなる。

 その結果、測定時体重50、70、90kgのいずれにおいても、本飼養法の採食速度は、従来飼養法より自然落下型で2.1倍、飼料切出し型で1.6倍速まることが明らかになりました(表−6)。このことが本飼養法の採食行動の変化(採食時間の短縮)として表れたものと考えられます。

表−6 飼料と水の混合割合による採食速度への影響

7. 離乳子豚への適応効果と問題点

 この飼養法は、おもに肥育豚において利用されていますが、一部には離乳子豚においても利用されていることから、子豚に適用した場合の効果と問題点を明らかにするために飼養試験を行い、次の結果が得られました。

【効 果】

(1) 増体の改善(馴致後は発育良好)
(2) 飼料摂取量の増加(5〜8%有意に増加)
(3) 水消費量の減少(肥育豚ほどの節水効果は期待できない)
(4) 採食時間の短縮による飼槽の利用性の向上

【問題点】

(1) 人工乳A段階では飼料の落ちが悪く、利用は困難(ブリッジの形成が障害)。
(2) ウェットフィーダーに慣れるまでの間の発育停滞
(3) 離乳子豚専用のウェットフィーダーが必要

ポイント5
  1. 本法の開始時期は、人工乳Bへの飼料切替え後の、体重12kg程度以上がよい。
  2. 使用する給餌器は、自然落下型の子豚育成用が望ましい。
  3. 給餌器に慣れるまでの管理に特に注意を払い、発育停滞を防ぐ。

8. ウェットフィーダーと設置方法

(1) フィーダー選定のポイント

 (1) 飼料の落し量の調節が容易で、その狂いの少ないもの。
 (2) 給水器の取付け位置は低く、飼槽に水を一旦落とす方式であること。
 (3) 飼槽は飼料のこぼしや付着の起こらない形状で、2頭口では仕切が深く、しっかりしたもの。
 (4) 材質は強固で腐食に強く、ボトル類はしっかりと固定され、振動で弛まないもの。

(2) フィーダーの設置

 ウェットフィーダーを設置する場合の概念図を示しました(図−5、6)。

図−5 ウェットフィーダーの取付け位置

 フィーダーの取付け位置は、基本的には管理通路から飼槽の状況が容易に確認できる位置に取付けるべきです(図5−A)。管理通路側の豚房柵に取付ける(図5−B)と、飼料の投入れには便利ですが、飼料や水の出具合を確認するためには、いちいち豚房内に入らないといけない場合もあります。

 畜舎構造としては、管理者が直線的に移動でき、その動きのなかで管理上必要な項目をチェックできることが重要です。

図−6 ウェットフィーダーの標準的設置方法

 なお、基本的には飼料タンクから搬送ラインにより、各フィーダーに配餌するシステムとすることが望ましいと思います(図−6)。

(筆者:長野県畜産試験場・主任研究員)