最近の養豚飼養管理技術(2)

─ 豚の繁殖生理の理解が重要 ─

伊 東 正 吾

 繁殖豚の管理については、基本となる繁殖生理をじゅうぶん理解し、その能力を最大限に引出す管理をすることが最も重要と思います。その意味から、若干理解するのに手間のかかる部分もあるかもしれませんが、繁殖生理を中心に解説したいと思います。

1. 種雄豚の繁殖生理と飼養管理

 雄豚は、生後約125日齢で生殖活動が可能な最初の時期になります。この時期を、春機発動期と呼びます。春機発動期になると、すでに精巣内に精子が観察されますが、その精子が受精能を獲得するまでには、一定の時間が必要です。

 精巣の発育や精子発生は、育成期の発育性が良好なものほど早く、精巣および精巣上体の発育は生後7ヵ月齢までが旺盛であることが知られています。精液量に関係する副生殖腺の発育は、ほぼ同様に生後7〜8ヵ月齢で著しくなり、最初の射精は生後5〜8ヵ月齢に認められます。なお、精子数と精液量は18ヵ月齢まで増加し、精巣で生産される男性ホルモン(テストステロン)は、副生殖腺の分泌機能の維持に影響します。

 一方、精子発生過程の最初の細胞である精祖細胞から成熟精子になるまでの期間(精子形成周期)は、豚では約34日です。精子は受精能を獲得するために、精巣上体に一定期間(約10日間)滞在して成熟することになります。

 これらのことから、種雄豚の性成熟期は生後7ヵ月齢頃が目安といえますが、個体により発育の遅速がありますので、発育が未熟な時期から頻繁に交配に使用する場合、その後の成長に影響がでないようにするため、繁殖供用開始からしばらくの間は、間隔をおいて徐々に利用することがたいせつです。

 基本的には繁殖供用頻度としては、通常3〜4日に1回程度が適当ですが、生後1年以上の場合には、2〜3日に1回程度の供用が可能です。

 1射精(精液量 250ml )に費やされるエネルギー量(DE)は110kcal程度とされ、蛋白質を主体とした養分の消費が多いので、供用回数の多い雄豚への飼料給与量を増やすことが必要です。また時には、ガーリックの添加給与を試みることも有効な方法のようです。ガーリックは、ビタミンB群や代謝に関するミネラル類が多く含まれ、また香辛料としての食欲増進効果が得られることから、体調の維持に効果があると思います。

 種雄豚はその導入価格が比較的高く、資本投資効果が得られる適正な繁殖供用頻度として、年間種付け回数は100〜120回が指標とされています。最近の詳細なデータは見当たりませんが、1982〜1983年に農水省畜産試験場と私たち県畜産試験場が共同で調査した結果では、指標に達しているのは6.0%で、50回以下が全体の69.7%を占めていました(表−1)。このことから、種雄豚1頭当りの種付け回数が極端に少なく、その効率的な活用がじゅうぶんに行われていないことがわかりました。1年間は約52週ですから、基本的繁殖供用頻度としては、1週間に2〜2.5回程度が最も経済的といえます。最近では、人工授精技術が発達し、1回の採精で数頭分に使用できる技術が確立できましたので、種雄豚の保有頭数も少なくすることができるようになりました。

表−1 種雄豚の年齢別種付け回数


単位:頭   農水省畜試 調査資料(1986)

 種雄豚の繋養期間は、その使用頻度にもよりますが、基本的には3年程度、4〜5日間隔であれば5〜6年といわれています。人工授精技術を繁殖管理に取入れることにより、個体ごとの精液性状や健康状態にあわせて随時更新時期も判断でき、常に種雄豚を良好な状態に保つことができます。

 なお、先月号でも若干述べましたが、種雄豚の基本的管理は必ず励行してください。

 日常の調教とブラッシングにより管理者とのコミュニケーションをはかるとともに、犬歯の切除や、移動時の事故発生を未然に防ぐよう、個体管理にじゅうぶんな注意を払う必要があるからです。また、豚は汗腺が退化しているため、夏季を中心とした暑熱対策を講じる必要があります。とくに雄豚の場合は、陰嚢内温度を体腔内よりも4〜7℃低く維持することが、良好な精子生産活動を遂行するために必要です。畜舎内で常時飼育する近年の形態では、通風と水浴等により体熱の放散を助長できるように注意し、運動場がある場合には、寒冷紗やブドウ棚またはフジ棚などを利用して、日陰の下で休めるようにしてやることがたいせつです。さらに、ワクチネーションなどの予防衛生や、運動器障害発生を予防するため、護蹄衛生にじゅうぶんな配慮をすることが重要です。

2. 種雌豚の繁殖生理と飼養管理

(1) 性成熟(春機発動)と繁殖特性

 豚の育種改良が急速に進み、その発育速度が速くなったため、最近では、種雌豚としての育成は体重約60kgから始める必要があるとされています。

 春機発動とはあまり聞き慣れない言葉かも知れませんが、ヒトでいえば初潮に類似し、生殖活動の開始時期をいいます。その後、生殖器が発達してきて、発情周期が規則的に繰返され、妊娠を円滑に遂行させ得るようになった時、初めて性成熟に達したとみなされます。春機発動に達する年齢は、栄養水準、生活環境(単飼、群飼等)、体重、季節、疾病および飼養管理により影響を受けるなどで、個体差が生じます。

 性成熟の時期についても同様で、春生まれより秋生まれが早く、品種によっても異なり、さらに純粋種より一代雑種の方が性成熟日齢は早くなっています。また、雄豚との接触が最も効果的であり(図−1)、成熟雄豚との同居により、性成熟に達する時期は生後日齢で、232日から191日と、41日も早くなったとの報告があります。この要因として、成熟雄豚の唾液の中に存在するフェロモンが、接触によって雌の鼻腔に直接付着して、効果を発現することが認められています。

図−1 若雌に雄との接触が初発情到達日齢に及ぼす影響

(Cole et al 1976)

 いずれにしても、基本的に雌豚の性成熟に達する時期は、その多くが170〜225日齢です。

 ところで、初産次に産子数が少ない場合について、「未経産豚は産子数が少なくて当たり前」、と最初から納得している方が意外に多くないでしょうか。多胎動物である豚の特性として、排卵数は、初回発情で8〜10個あるのに対し、3回目の発情では12〜14個に増加します。したがって、3回目またはそれ以後の発情で、適正日齢の過肥状態でない繁殖豚に交配すれば、排卵数および胚の生存性が増加し、産子数は多くなるのです。なお、豚の排卵数に関する特性として、ある程度の産次までは、その回次が進むにつれ増加します(図−2)。さらに豚は、交配期に飼料を多給すると排卵数が増えます。ただし、この場合、間違えてはいけないことが1つあります。それは、交配前1〜2週間に飼料を増給するフラッシング効果のあるのは、栄養状態の良くない豚だけです。これを間違えると雌豚が過肥状態になるのみで、繁殖機能は低下し、逆効果になってしまいます。適正な飼料給与量について、昨年改訂された「日本飼養標準(豚・1998:中央畜産会発行)」を是非参考にして下さい。

図−2 豚の産次別の繁殖成績

(Perry, (1954) J. Embryol. Exp. Morph., 2, 308; Lush and Molln, (1942) Tech. Bull. U.S.Dept. Agric., 836; Rasbech, (1969) Br. Vet. J., 125, 599より改写)

(2) 発情・排卵と発情周期

 発情とは、雌が雄を迎え交配に応じる(許容)状態のことをいいます。一般的に発情徴候としては、行動の変化(落着きの消失、乗駕行動の発現、不動反応、食欲の減退など)や外陰部反応(腫張、発赤、粘液漏出など)などです。時々、発情徴候を認めると発情開始と判断する方もいますが、発情徴候が発現しても、雄を許容するか背圧反応(背中を押すとじっとして動かなくなる現象)が陽性にならないと、真の発情とは断定できません。

 発情周期とは、発情の開始日から次の発情の開始日までの期間をいい、その長さは平均21日(範囲:おおむね19〜23日)であり、品種間に差はありませんが、経産豚と未経産豚を比較すると、経産豚の方がやや長い傾向です。

 発情の開始から終了までの発情持続時間は、平均2日間で、経産豚の方が未経産豚よりやや長い傾向です。

 発情持続時間について、伊藤ら(1944)は平均58時間としています。一方アンダーソン(1993)は、平均では40〜60時間ですが、未経産豚は平均47時間で、経産豚では平均56時間と長くなると述べています。さらに、発情持続時間は品種、季節(夏は長く、冬は短い)およびホルモンバランスの異常により影響されます。

 発情徴候は、発情開始の2〜3日前から外陰部の発赤と腫張が始まり、時間の経過とともにその程度が顕著となってきます。発情期に入れば外陰部の発赤・腫張は最高潮に達しますが、発情の中期以降はしだいにその程度を減じてきます。

 豚の発情期における最も特徴的な所見の1つに、子宮頸管の腫張と硬化が直腸から触知できます。黄体期には柔軟で腹腔内に下垂している子宮頸管は、卵巣で卵胞が発育し始めると、急激に太さを増して硬化し、最盛期には骨盤腔内で硬い肉柱状となって水平または弓状に突出してきます。この所見は、直腸から手を入れれば、初心者でも明瞭に分かります。

 筆者は、豚の直腸検査(写真−1、2)により、発情周期の卵巣の経時的変化を観察し、発情期の雌豚における外部発情徴候および子宮頸管の変化を同時に確認しています。発情周期または発情期の発情徴候と卵巣の動態をイメージするのに役立つと思いますので、図−3、4に示します。図では、外陰部と子宮頸管の状態を−(マイナス)から+++(スリープラス)まで示し、基準からの経過時間(日数)を横軸の数字で示しています。卵胞の発育と発情徴候の程度の増加、排卵後に卵胞の跡に形成される黄体の発育状況と発情徴候の状態をつきあわせながらみていただくとよいと思います。

 
写真−1 豚の直腸検査の様子
経産豚であれば、無保定で給飾するのみでゆっくり直腸検査を行うことができる。ストールではさらに容易
  写真−2 卵巣スケッチの様子
正確を期すため、片手で卵巣を触診し、片手でスケッチを行う。

図−3 豚の発情周期における臨床繁殖学的所見

図−4 周排卵期における発情徴候と卵巣触診所見の変化

 排卵時期について伊藤ら(1944)は、発情開始後平均31時間後に起こると報告しています。ポルジー(1969)は発情開始後36〜50時間、ナルバンドフ(1976)は30〜40時間後、ラサール(1980)は36〜42時間後と、それぞれ報告しています。また岩村ら(1986)は、例数は少ないのですが、発情期間が2日間(平均44.5時間)の場合、排卵は発情開始後25〜40時間で開始する傾向であり、また、発情期間が3日間(平均76.5時間)の場合には、発情開始後48〜51時間での排卵開始を認めています。

 このように、排卵開始時期については研究者により若干のバラツキがありますが、この原因が供試豚の品種によるのか、産次に左右されるのか、それとも他の要因が影響するのか明確ではありません。しかし、現実に個体差は認められるようです。

 発情期間と排卵時期の関係が、きめ細かくかつ明確に把握されないと、現在普及している豚の人工授精技術のさらなる発展が得られない場合もあるように思います。

(3)発情周期の卵巣と内分泌環境

 豚の卵巣には、黄体期と卵胞初期に一個体当り約50個の小型卵胞(直径2〜5mm)が存在します。発情前期と発情期には、約10〜20個の卵胞が発育して成熟卵胞(8〜10mm)に達します。なお、黄体期においても卵巣には小型卵胞は通常存在します。排卵直後には、卵胞内の2種類の細胞(顆粒層細胞と卵胞膜細胞)が急激に増殖し、黄体が形成されます。排卵後形成される黄体は、約4日でほぼ完成し、6〜8日目には直径8〜15mmと最大の大きさに達し、弾力性に富んだ細胞の塊となります。排卵後16日目まではホルモン分泌機能も盛んですが、その後形態的にも機能的にも急激に退行し、分泌機能を有しない白体になります。なお黄体は、妊娠が成立すれば妊娠黄体として妊娠中の長期間にわたってその機能を維持します。

 発情周期は、基本的には間脳・視床下部−下垂体−卵巣の性中枢が主体となり、極めて複雑で精巧な相互の関係から形成されています。このことについて、より簡略化した大筋の説明をしたいと思います(図−5〜8)。

図−5 繁殖領域における主要ホルモンの分泌器官とその標的器官についての相関模式図


(家畜共済の診断指針タより)
(森(純)原図、1990)

図−6 発情周期における性ホルモンと卵巣の動態

図−7 発情周期における性ホルモンの動態

(パルビジ:1976)

図−8 周排卵期における血中LH、E2β、P4濃度の変化

 発情期に大きな役割を担うホルモンにエストロジェンがありますが、このホルモンは卵胞(発情)ホルモンとも呼ばれ、卵胞が発育するとともに、おもに卵胞内で生成分泌されます。なお卵胞の発育は、脳の中にある視床下部から分泌される2種類の性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)が最初の刺激を下垂体に与え、次いで下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)が卵胞を強く刺激します。これにより卵胞が発育し、そして成熟した時期に血中エストロジェン濃度が最高値に達し、その刺激により下垂体からLHが一過性に大量放出(LHサージと呼ぶ)され、排卵が起きるのです。

 交配時期の近い繁殖母豚の管理において最も注意すべきことがあります。それは、発情が回帰する1週間程前から発情開始予定日の間に、何らかのストレス(暑熱、疾病、群構成、その他飼養管理失宜など)が持続的にあった場合、排卵を誘起するのに最も重要なLHサージが消失して排卵障害となり、最終的には、卵巣嚢腫に移行することが多いということです(図−9、10、写真−3)。このことは、筆者の試験研究のなかで、極めて明瞭に確認することができました。

図−9 ACTH投与後の発情徴候と卵巣触診所見の変化

図−10 ACTH投与前後における血中エストロジェン、プロジェステロン濃度と卵巣の変化


写真−3 ACTH投与により発生した卵巣曩腫の剖検所見(No.S-77)
(図−6に示したカルテの最後の卵巣所見と同じである)

 母豚の管理では、とくに受胎が完了するまでは、細心の注意を払って飼養すべきです。

 排卵が起きた後は、黄体細胞が急激に増殖して黄体が形成されるため、この黄体から黄体ホルモン(プロジェステロン)が多量に分泌されます。プロジェステロンは、その濃度が高くなることにより、視床下部と下垂体に抑制的に作用し、新たな卵胞の発育を抑制します。したがって、発情周期の黄体期や妊娠期には、発情の回帰が抑制されるのです。

 発情周期の後半で妊娠が成立しない場合には、母豚の子宮内膜から、黄体を退行させるホルモン(プロスタグランディンF:PGF)が分泌され始め、黄体が退行し始める12〜16日目の時期にピークに達します。これにより、黄体が急速に退行・消失し、次の発情が回帰するのです。

(4)交配適期

 交配適期を決定する要因として伊藤ら(1944)は、(1)排卵の時期、(2)卵子の授精能保有時間、(3)雌生殖器内における精子の上走速度、(4)雌生殖器内における精子の授精能獲得に要する時間とその保有時間、の4要因があるとしています。そして、発情開始後の交配時期と受胎率の関係から、豚の交配適期は発情開始後12〜22.5時間であるといっています(図−11)。リード(1982:図12)は、液状精液による人工授精で最も良い受胎率が得られる時期について、発情開始後22〜36時間であると考え、1回目の授精は発情開始後12〜28時間の間に行い、2回目は28〜44時間に実施することを奨励しています。またポルジー(1974:図−13)は、受胎率と産子数を総合的にとらえた場合、発情開始後約23〜35時間の間に授精すると、受胎率が比較的良好で、高い産子数が期待できると示唆しています。

図−11 豚の受精時期と発情徴候および受胎率

(丹羽ら:1970)

図−12 豚の人工授精適期

(Reed:1982を一部修正)

図−13 豚の授精時期と発情徴候および受胎率

(ポルジー:1974)

(5) 妊娠期

 妊娠期は、前述したように妊娠黄体が繁殖機能を支配し、若干の内分泌的変動は妊娠前期に認められますが、妊娠中期以降は比較的安定した時期を迎えます。

 交配後1周期経過した時点で、発情回帰の有無か、直腸検査法による子宮動脈の妊娠搏動の有無を確認するか、超音波検査により妊娠の成否を判定することが重要です。

 一般に妊娠豚管理については、飼料の給与量がやや不足する程度では胎子の発育に支障をきたさないとされています。母体の栄養低下は望ましくないのですが、基本的には、1日1.5kg以上の給与量であれば、産子数も低下しないことが認められています。かつては、妊娠期の母体と胎子のステージに合わせて飼料給与量を変えていましたが、現在では母豚の栄養面での緩衡能力が確認され、妊娠全期間の給与養分量が重要であるといわれています。また、妊娠期の飼料摂取量は、授乳期の飼料摂取量に影響を及ぼし、妊娠期に飼料を多給すると、授乳期の飼料摂取量が減少することが認められています。ただし、授乳期の栄養レベルの低下は、離乳後の発情回帰性に大きな影響を及ぼすため、注意が必要です。

 基本的には、最近の飼養標準を遵守し、適正な管理を心掛けることが最もたいせつです。

(6) 分娩期から離乳期

 自然分娩においては、分娩開始の引き金は胎子によって引かれ、内分泌的、神経的および機械的因子の複雑な相互作用によって遂行されます。

 胎子の視床下部−下垂体−副腎の活性化により副腎皮質ホルモン(コルチゾール)が胎盤を刺激し、エストロジェンの分泌量の増加、PGFの合成・分泌促進、黄体の退行によるプロジェステロン濃度の減少と卵巣からのリラキシン分泌による子宮頸管の軟化・拡張と骨盤靱帯の弛緩と、一連のメカニズムが進行して分娩が開始されるのです。

 一方、人工的な分娩誘起は、同時期にまとめて分娩させるか、分娩予定日を経過してもその徴候が認められない場合に実施されます。基本的には妊娠110日齢以降の時期にPGFを母豚に投与して、妊娠黄体の強制的退行を促すことにより行います。この場合、投与薬剤の種類にもよりますが、処置後12〜36時間後に分娩が開始される場合が多いようです。

 分娩後3〜4日以内に発情様行動を示す母豚が認められるとの報告がありますが、この場合は排卵をともなうものでなく、子宮修復も不充分であるため、交配しても妊娠しません。この現象は、胎子胎盤系由来の高エストロジェン環境がもたらしたものと考えられていますが、明確ではありません。

 筆者ら(1986)は、分娩直後から離乳期まで、自然分娩母豚の卵巣と子宮を直腸検査等により観察し、妊娠黄体は分娩後5〜7日で完全に消失することを確認しています。また、黄体退行後の授乳期卵巣は、卵巣静止の状態で経過し、新たな卵胞の明瞭な発育所見は認められませんでした(図−14)。

図−14 自然哺育母豚における分娩後の生殖器所見

 分娩後の子宮修復性についてパーマーら(1965)やハンター(1982)は、分娩後3〜4週間ころに急激に回復すると報告しています。筆者ら(1987)は、超早期離乳母豚においてではありますが、分娩後の子宮重量を指標として修復性を検討したところ、その重量は、分娩後2週齢までは急激に減少し、3週齢で緩やかな減少傾向となり、修復がほぼ終息に近づいていることを認めました(図−15)。

図−15 超早期離乳母豚の分娩 後子宮重量の変化

 最近は、分離早期離乳法(SEW)が注目され、16〜18日齢での離乳を取入れている場合もあることから、離乳後の母豚の発情回帰性と繁殖機能修復性の両面から、詳細な基礎データの蓄積が必要であるように思われます。

 なお、従来は離乳時の乳房炎を防ぐために、当日は絶食し、その後数日間は給与量を減じる方法が行われていました。しかし現在では、離乳当日であっても2kg程度の飼料を与え、発情が回帰するまでは2.5〜3.0kg程度の量を給与する方が、繁殖成績も良好であることが認められています。

 豚の場合、授乳中に発情が回帰することはほとんどないとされています。しかし、極端に哺乳子豚数が少ない場合などには、例外的に発情が回帰することもあるようです。

 通常は、離乳と同時に性中枢の活性化が促され、離乳後2〜3日で直腸検査により触知可能な卵胞の発育が認められ、3〜7日で発情が回帰し、排卵が正常に起こります。

(筆者:長野県畜産試験場養豚部・主任研究員)