自給粗飼料の生産をしましょう〔II〕

─ 主な飼料作物の栽培・利用特性 ─

魚 住  順

はじめに

 飼料作物には20以上の種類があり、生長に適する土壌条件や温度が異なったり、病・虫害、湿害、干ばつなどの災害に対する抵抗力が異なったりと生育特性は非常に多彩です。もちろん、収量性、飼料価値、調製適性などエサとしての特性もさまざまです。

 表−1には、主な飼料作物の特徴を大まかにまとめてみました。それぞれの作物の長所・短所をじゅうぶんに理解し、わが家の経営条件にピッタリの作物を導入することが、安定した飼料生産の第一歩といえます。

表−1 主要飼料作物の生育・収量特性

 これらの作物のすべてについて詳細に解説したいところですが、紙面の都合もありますので、ここでは夏作物として広く栽培されているトウモロコシとソルガム類をピックアップして、長所・短所、栽培上の留意点などを、最近の研究状況も交えながら紹介していきたいと思います。

1.優等生トウモロコシの弱点

 トウモロコシは、作り易さ、収量性、サイレージ品質、養分含量のいずれにも優れ、夏作物のなかでは最も多く作付けされています。作物としての完成度は高く、いわば飼料作物の優等生ですが、優等生をうまく伸ばすには、短所を知ることがより重要と考えますので、ここでは、あえて弱点を主体に紹介してみたいと思います。

1)水気の多い畑はきらい

 まず第一に、耐湿性の弱さが短所としてあげられます。主要作物の湛水処理に対する反応は図−1に示したとおりで、トウモロコシの耐湿性は最低の水準です。とくに生育初期の湛水は生長に大きなダメージを与えます。

図−1 主な飼料作物の耐湿性の違い

 都府県では、転換畑でのトウモロコシの作付けが多く、しばしば湿害が問題になります。市販品種の中から耐湿性の強い品種を選定する試みも多く行われてきましたが、よい品質のものをみつけることはできませんでした。また、耐湿性の強い品種を育種する努力も続けられていますが、まだ品種を作りあげるにはいたっていません。このような現状ですから、残念ながら、トウモロコシは過湿地には向かない作物であるということを前提に、排水のよい作付地を選定するか、それなりの営農排水を行うかのいずれかで対応するほかありません。

 同じ長大型の作物であるソルガムは、トウモロコシよりも耐湿性が強いという説もありますが、私が調べた範囲では大きな違いはありませんでした。少なくとも、ソルガムに換えさえすれば湿害が回避できるというのは、明らかに誤りですので注意してください。

2)虚弱体質?

 次の短所としては、他の飼料作物に比べ病気に弱いことがあげられます。作物全体のなかでは、むしろ病気に強い部類に入るのですが、飼料作物には病気知らずの強者がたくさんあるので、このなかではどうしても虚弱体質にみえてしまいます。問題になる病気としては、ごま葉枯れ病、黒穂病、根ぐされ病、すす紋病、南方さび病などがあげられますが、薬剤による病害防除はみとめられていませんし、またコストの面で割が合いません。したがって、病害に対処するためには、抵抗性の品種を導入することが唯一の手段となります。トウモロコシの育種では、耐病性をつけることが大きな目標のひとつとなっており、上述の病気に対して耐性を持つ市販品種が多く流通しています。ただし、すべての病気に強い品種はありませんので、自分の地域ではどの様な病気が問題となっているのかを、じゅうぶん把握して品種を選定することが肝心です。

3)エイリアン? に弱い

 次に、最近大きな問題になっている弱点をひとつあげておきます。

 トウモロコシは初期生育が早く、雑草に対する競合力が強い作物です。また除草剤による雑草防除法も完成されています。ところが近年、トウモロコシ畑が、ある種の雑草の巣窟と化しつつあるのです。ご存じの方も多いと思いますが、ある種の雑草とは、イチビ、キハマスゲ、ワルナスビ、アレチウリ、チョウセンアサガオといった外国からやってきた、いわゆる外来雑草のことです。「外来雑草」という言葉は、外国からの「訪問者」のような印象を受けますが、実際は大変な厄介者です。英語ではエイリアン・ウィード(ウィード=雑草)とよばれ、被害状況からはこちらの方が納得できるよび方かも知れません。

写真1:最も広く蔓延している外来雑草「イチビ」

写真2:広がると防除が非常に困難な外来雑草「ワルナスビ」 写真3:広がると被害が最も大きい外来雑草「アレチウリ」

 外来雑草の多くは、輸入の濃厚飼料に混入して日本に持込まれたと考えられています。ただし、これがトウモロコシ畑に爆発的に広がったのには、他の原因が大きくかかわっています。

写真4:アレチウリの被害状況
トウモロコシの上を覆い尽くしてしまったアレチウリ。
このような状況になると、からみあって収穫は不可能となります。

 

 その原因のひとつが、未熟なふん尿の施用です。飼料中の雑草種子が採食されて牛のお腹に入りますが、消化管内で死んでしまうものはほとんどなく、生きたままふんに混じって排出されます。たとえふんに雑草種子が混じっていても、じゅうぶん堆肥化すれば発酵熱で死んでしまうのですが、発酵が不十分だと生きたまま圃場にばらまかれます。「生ふんによる種子の散布→畑での増殖→飼料への種子混入量の増加→ふん中種子の増加」という悪循環に陥ると雑草害は急速に深刻化します。最近は、多頭化にともないふん尿処理が追いつかず、生のふん尿を施用する農家が増えており、これが、外来雑草の繁茂に一役かっていることは間違いありません。

 もうひとつの理由は、意外にもトウモロコシの完成された除草体系にあります。

 今のトウモロコシ用の除草剤は、ヒエ、メヒシバ、タデ、ヒユといった在来の雑草を強力に抑制します。生ふんを施用してもこの除草体系を守っていれば、これらの雑草が深刻な被害をもたらすことは希です。ところが、現在問題となっている外来雑草の多くは、この除草剤に耐えて生き延びる能力を備えているのです。外来雑草は、ライバルとなる在来の雑草が生えない広いスペースで、作物用の肥料を横取りして、すくすくと育つことができます。人は外来雑草のためにせっせと肥料と除草剤をまいて、りっぱな雑草を自ら作りあげているようなものです。

 もちろん、研究機関でも、手をこまねいていたわけではなく、外来雑草の防除に向けた新たな除草剤体系の開発に精力的に取組み、いくつかの雑草については、有効な防除法もみつかっています。しかし、残念ながらワルナスビなど手の施し用のない雑草も残されているのが現実です。

 トウモロコシ畑は外来雑草の侵入を許しやすい環境にあることを念頭におき、未熟なふん尿の施用を極力抑え、さらに、早期対処のために、外来雑草の姿かたちを覚えておくことをお薦めします。外来雑草の種類や、最新の防除技術について説明する紙面はありませんが、お近くの試験研究機関や普及所は、すでに多くのノウハウを持っているはずなので、相談されるとよいでしょう。

4)ロールは無理?

 最後に、これは短所とはいえないかも知れませんが、ロールベールに調製できないことは、やはりトウモロコシの大きな弱点としてあげておく必要があります。

 最近では、牧草類の多くがロール成型されるようになっていますが、夏作にトウモロコシを導入するとハーベスタ体系との二重投資を強いられてしまいます。夏作にロール用作物を導入することも考えられますが、エサとしてみた場合、トウモロコシに並ぶ品質の作物がなかなか見あたらないのが現状です。

 この問題は、トウモロコシがもつ最大の弱点として、ロールベール体系が広まり始めた当初から解決策が模索されてきました。その成果のひとつとして特筆できるのが、カッティングロールベールシステムの開発です。このシステムの完成により、コーンハーベスタで刈取・細切した材料草を直接ロールにまけるようになりました。将来的には、牧草類にも対応できるように改良を加え、周年的にカッティングロールベールを生産し、給与・混合の労力についても大幅に軽減していこうとするものです。

 現在は、トウモロコシ以外での検討はなされていませんし、トウモロコシでも高水分材料のロールとなってしまうので、取扱うのに重すぎたり、形が崩れやすかったりといった問題点が残されています。また、ロールベールサイレージ化したときの品質や保存性についても検討がじゅうぶんとはいえません。このようにいくつかのハードルが残されてはいますが、近い将来、日本の飼料生産を大きく変えていく革新的な技術として提供できるものと確信しています。

2.いろいろな顔を持つソルガム類

 ソルガム類はトウモロコシに次ぐ栽培面積をもつ夏作物です。トウモロコシと同様に長大型の作物で、似通ったところも多いのですが、両者の違いをしっかり把握して、適材適所で使い分けることが、安定的な飼料生産の重要なポイントとなります。ここでは、ソルガム類とトウモロコシの違いを重点的に紹介したいと思います。

1)ソルガム類の類とは何?

 本題に入る前に、ソルガム類とは何かを説明しておきます。ソルガム類とは、ソルガム、スーダン型ソルガム、スーダングラスの三つの作物の総称です。ソルガムとスーダングラスは近縁関係にあり、この二つを掛け合わせて作った作物がスーダン型ソルガムです。また、ソルガムは利用適性によって、子実型ソルガム、兼用型ソルガム、ソルゴー型ソルガムの三つに分けられています。この関係を整理して表−2に示しました。

表−2 ソルガム類の分類、呼称と利用適性

2)暑いほど元気

 ソルガム類の最大の長所は、多収性にあります。トウモロコシが品質重視作物であるとすれば、こちらは、収量重視作物といえましょう。ただし、ソルガム類の多収性を活かすには、温暖な気候であることが絶対条件となります。年平均気温でみますと、14℃以上であればトウモロコシよりも収量的には有利ですが、12℃以下では、ソルガム類の多収性を発揮させることは難しいといえます。

3)再生力が強い

 ソルガム類は再生力にすぐれ、多回刈りできます。これも、トウモロコシにない長所です。再生利用はすべてのソルガム類で可能ですが、草種によって若干特性が異なります。 分げつ力は図−2に示すようにスーダングラスが最も強く、次いでスーダン型ソルガム、ソルガムの順に弱くなります。分げつ力の強いスーダングラスは、出穂前の若い時期に刈取っても旺盛に再生してきますが、ソルガムは若刈りしすぎると再生不良に陥ることがあり、とくに早生品種でこの傾向が顕著です。ただし、早生のソルガムでも乳熟期以降まで生育させると、じゅうぶん実用に耐えるだけの再生力がついてきますので、早生のソルガムを再生させる場合は、一番刈りを乳熟期以降に設定することがポイントとなります。

図−2 ソルガム類の1個体当り分げつ数(草地試験場、1993、1994年)

注 1)主稈を含む分げつ数
  2)個体植え(1m2当り1本)したときの分げつ数

 

4)ロールだってOK

 ソルガム類の長所としてもうひとつあげられるのが、ロールベール適性の高さです。ロールベールには、茎の細いスーダングラスやスーダン型ソルガムが利用されていますが、現在研究に取組まれているのが、ソルガムの利用です。ソルガムは茎が太くて通常の栽培法ではとてもロールにはまけませんが、これを密植栽培で細茎にしてまいてしまおうというわけです。ここでその技術の詳細を紹介する余裕はありませんが、徳島、香川、愛媛、高知の四国4県の畜産試験場では、栽培、収穫、調製技術について共同研究を実施し、現在実用化のための最終段階の詰めを行っていますので、詳細を知りたい方は普及所等を通じて問合わせてみてください。

5)品種が多彩である

 ソルガム類の品種数は、100程度でトウモロコシとほぼ同じですが、その特性は、トウモロコシよりもはるかにバラエティに富んでおり、ソルガム類の長所のひとつとなっています。草型も、茎が細く牧草類に近いもの、草丈が4m以上に達するものなど整理に困るほどさまざまです。このような草型の多様さは、対応できる調製方法の豊富さとしても現れています(表−1)。また、播種してから50日程度で出穂するもの、出穂に120日以上かかるものまで早晩性に富むこともトウモロコシにない特性といえます。

6)出穂特性は複雑怪奇

 このような品種の多様性は、ソルガム類の長所でもありますが、その分、品種選定にあたってはトウモロコシより慎重さが求められます。早晩性が豊富にもかかわらず、トウモロコシの相対熟度のような早晩性の統一指標がないことは、ソルガム類の大きな弱点となっています。

 トウモロコシでは、相対熟度でおおよその収穫時期が推定できますが、ソルガム類の早晩性の表示は、早生、中生、晩生といった抽象的なもので、これだけで出穂時期を推定することは困難です。

 ソルガム類にも相対熟度のような指標があれば作付計画が楽になるのですが、実は、ソルガム類には、共通指標を設定したくても設定できない理由があります。ここではそのことについて少し説明しておきます。

 表−3は、ソルガムの5品種について、5月上旬播種と6月中旬播種の出穂所要日数を比較して示したものです。表−3からわかるように、5月上旬播種では品種間の出穂所要日数の違いは最大4日で、この数値だけをみれば、どの品種も早晩性に大差がないようにみえます。ところが6月中旬に播種すると、GS401やNK326は晩生化して、出穂所要日数の差は最大28日にも拡大してしまっています。

表−3 播種期と出穂所要日数との関係(魚住ら、1985)

 このように、ソルガム類には栽培条件によって早晩性が大きく変化する品種が存在するのです。上述のGS401やNK326はその典型的な例で、このことが相対熟度のような共通指標をもうけることを難しくしています。

 一般に作物は、温度が低ければ、生育が遅くなって出穂も遅くなり、逆に高ければ出穂が早くなります。トウモロコシや表−3のスズホ、P959、FS4などは、このような普通の生育反応を示しますので、6月中旬頃までの標準播種期内ならば、温度の高い遅まきほど出穂に要する日数が短くなります。ところが、GS401やNK326のような品種は、高温では幼穂が形成されにくいために、遅まきしても出穂に要する日数が短縮しなかったり、逆に増加したりします。このような特性を持つ品種は、播種期によって草丈や収量が大きく変化するのが特徴です。極晩生品種の多くはこのような特性を持っており、遅まきすると極晩生本来の草型と収量が得られますが、早限近くに播種して低温に遭遇すると、幼穂が早く形成されて、期待した収量を得られないことが多いのでとくに注意が必要です。表−4には、市販品種を、このような温度に対する感受性の違いに基づいて分類して示しました。導入品種の選定や作付体系の組立ての際の参考にしてください。

表−4 ソルガム類における温度感応性の品種間差


品 種

温度感応性無〜弱の品種
ソルガム HS-G, ENERGY5, X82080, KCS104, BR48, FS5, スズホ,
NS-V, P956, FS305, P988, EARLY SUMAC, 四雑4号,
コンモン(サカタ)S99
スーダングラス HS38, HS67, KCS202, PIPER, MARCH-V, HS8S
スーダン型ソルガム  ハイブリッドスーダン, HS8S, K70, KS2, ST6, HGR2,
K0W KANDY, サンライズ

温度感応性中の品種
ソルガム SIL099, KCS105, NS30F, SG1A, FS902, P931,
SUGER GRAZE, GROWERS 30F, FS451,
ハイブリッドソルゴー(サカタ), X8631A
スーダングラス HS-K1
スーダン型ソルガム  SX11, SX17, SORDAN

温度感応性強の品種
ソルガム NK326, GS401, NS30A, NS-A300, SCS405, H03,
FS403, GSC1515F, サンライズN
スーダングラス PC3079,SS901

注)温度感応性の強い品種ほど、高温条件下で大型化する性質が強い

 

おわりに

 以上、トウモロコシとソルガム類を主体に栽培特性の概略を述べました。夏作物については、この二つの使い分けだけで大部分の状況に対応できると思います。他の作物は、トウモロコシやソルガム類の補完が主な役割となりますが、その際、トウモロコシやソルガム類の弱点である乾燥適性、耐湿性、病虫害耐性、獣鳥害耐性などにポイントを絞って選定するとよいと思います。

 また、今回は冬作物について紹介することはできませんでしたが、基本的には、麦類とイタリアンライグラスの使い分けが重要となります。麦類の長所としては、耐寒性が強い、秋作が可能、予乾の省略が可能(ホールクロップ利用)、1回刈りで多収、などがあげられ、イタリアンライグラスの長所としては、作りやすい、耐湿性が強い、品種が豊富である、多回刈りできる、などがあげられます。

 冒頭でも述べましたが、作物の特性を知ることは、飼料生産の基本です。じゅうぶんな知識を武器として、人に誇れるりっぱな畑づくりをしていただくことを心から願っております。

(筆者:農水省草地試験場 栽培生理研究室・主任研究官)