ふん堆積発酵時の通気をチェックできる測定器

中 西 隆 男

 酪農家や養豚家でよくみられる家畜ふんの発酵処理には、堆肥舎の床面に塩ビを配管し、ブロワーで送風する方法があります。

 ふん尿処理に関する相談や質問の中にはこの通気発酵処理に関するものが多くありますので、その相談などを整理すると問題点は次のとおりです(図−1)。

図−1 通気発酵処理の問題点

1.すでに通気型堆肥舎を設置している場合
(1)不適切な通気配管とふんの調整不良により通気抵抗が高く設置された結果、運転コスト(ブロワーの電気代)が多くかかる。
(2)通気しても発酵不良である。
  ア.ふんの調整ができない。
   しかし、適正かどうかを判断する方法がない。
  イ.ブロワーの性能不足または不適切な配管方法がみられる。
 
2.今後、通気型堆肥舎を設置しようとする場合
(1)通気抵抗の少ない均一な送風のできる通気配管のやり方について情報不足。
(2)ふんの水分調整資材(オガクズ、戻し堆肥、乾燥牛ふん、混合物)に応じた調整方法と、その時のふんの通気抵抗値の情報がほしい。
(3)(1)(2)について是非検討すべきであるが、これらの情報や調査方法が少なく、ブロワーの性能はどの程度のものを設置すればよいのかよく分からない。

 一般に普及している処理技術にもかかわらず農家ではこのような悩みをかかえています。

通気発酵に適した調整は難しい

 これらの問題点のうち、適切なブロワーの選定や通気配管のやり方は施設配置業者等の専門家に任せるとしても、通気発酵に適したふんの調整(問題点1−(2)−アとか2−(2))は農家自身で解決しなければなりませんが、これは非常に難しいことです。

 ふんの発酵条件には水分含量、ふん調整副資材の種類、かさ密度、有機物含量、発酵時の温度等があり、これらが適正であれば発酵が促進されます。

 これらの条件のうち有機物はふんから、温度は気象条件に任せるとして、農家でしなければならないのはかさ密度と水分含量の調整、そしてふん調整副資材の選択です。

 その場合、水分含量の調整は、あくまでもかさ密度を調整するためにおこなうのであって、水分調整が目的ではありません。一般に「水分を70%以下に調整すれば発酵する」などといわれていますが、これは部分的には正解です、しかしある意味では誤った考えです。

 乾燥処理した牛ふん、鶏ふんあるいはオガクズ利用であれば有機物も豊富でその性状も発酵に適しているため水分だけ注意すれば良いかも知れませんが、今日では、堆肥需要期の限定から余剰堆肥の再利用をはかるため、発酵した戻したい肥を水分調整資材に利用する農家もみられる等、堆肥処理方法も変化しています。

 当場で経験したことですが、発酵した戻したい肥を副資材として用いて生牛ふんの水分調整をした場合、その戻し堆肥の発酵状態と水分含量によっては同じ水分(%)に調整しても通気発酵に向く場合と向かない場合がありました。それは粘りがでてふんが団子状になってしまったり、堆積ふんの密度が高くなってしまったり、水分を指標にした調整で失敗しました。うまく説明できませんが、副資材に使用した戻したい肥の性状が微妙に変化していたのです。

 このことから、副資材を用いてふんを調整する目的は、「水分を何%にするため」ではなく、ふんの中を空気が通りやすい状態にするためだと考えてください。

 水分含量にこだわると失敗を招くことがあるので、かさ密度の調整と副資材の選択の2点に注意してふんの調整をおこなってください。

 過去にはしばしば「水分調整のための副資材」というイメージが定着していたため混乱を生じたのではないでしょうか? 副資材はふんのかさや密度や性状を調整するためのものでありますから「ふん調整副資材」とでもよぶべきだったのです。

 すなわち「通気発酵に適したふんの調整とは、発酵に適した副資材を選択して空気を通り易くなるようにかさ密度(比重)を調整すること」だと考えます。

 農家では利用する副資材の性状も四季を通じて変化します生ふんも同様です。このように条件が変化する中で最適発酵条件に調整することは至難の技です。

ふん調整の良否を簡単に見分ける方法はないのでしょうか?

 そこで徳島県畜産試験場では、農家が発酵に最適なふん調整ができるように、しかも農家の庭先で簡単かつ正確に、調整の良否を判定できる測定器のようなものができないか、いろいろ検討をしてみました。

通気抵抗値とはどういう意味?

 全国農業協同組合連合会施設・資材部編の「家畜のふん尿処理利用・施設・機械の構造」にはつぎのように説明されています。

 「堆肥材料に通気する場合、その通気する空気の圧力をあげないと空気は材料中を通り抜けられない。

 このことを専門用語で、材料の通気抵抗(または、空気抵抗、圧力損失)とよび、この抵抗値を水中何mmH2Oというよび方をする」

 つぎに、通気抵抗について徳島畜試で気づいた点を述べます。

 「通気発酵施設では、塩ビ配管の曲がり部の数や位置、配管の小穴の数、配管内に貯留する汚水の有無、ダンバーによる送風量の調節、配管の直径等がブロワーへの通気抵抗として影響し、同様に堆積ふんの調整の良否もブロワーへの通気抵抗として加算され負荷される」

 また、配管内通気抵抗の適正化はブロワーから発生する騒音対策の点からも検討すべきです。

●堆積ふんの通気抵抗値はいったいどのくらいなのか?

 まず、床面からブロワーで送風した場合の通気抵抗値はいったいどの程度あるのか知るために、乳牛ふんの水分含量を戻したい肥等で調整して測定してみました。

 その結果は図−2(送風量を堆積容積の1/20とした場合)のとおりです。

図-2 戻し堆肥による水分調整時の通気抵抗の変化

 水分が57.6〜65.9%に調整されたふんの通気抵抗値は5〜25mmH2Oと低い値を示しました。

 送風量を約2倍に増加した場合も40mmH2O以下の値でした。ところが、水分が67.7%と70.6%に調整されたふんの通気抵抗値は高くなり、112〜230mmH2Oを示しました。また、送風量をさらに1.5倍に増加すると通気抵抗値は268〜455mmH2Oと上昇しました。

 この試験によりつぎのことがわかりました。

  • 発酵に適したふん調整ができているとふんの通気抵抗値は50 mmH2O以下と低い。
  • 発酵に適さない調整ふんや通気抵抗値が100 mmH2O以上に上昇する。
  •  このことに着目し、通気発酵する場合、堆積ふんの調整の良否は通気抵抗値の高低を指標とし判断するのが確実な方法と考えました。

     この考え方に基づいて当畜試では、農家の庭先でふんの調整の良否を通気抵抗値から判定する測定器を制作しました。

     制作した測定器(写真−1)の構成(別表)はつぎのとおりです。

    写真−1 測定器

    (別表)簡易測定器の構成

    ブロワー 出力0.75kw
    インバータ
    電源スイッチ
    微差圧計0〜100mmH2O
    微差圧計0〜1,000mmH2O
    風速計
    サクションホース 5m
    通気盤 直径10mm 小孔200個
    堆肥ガード
    キャスター付台

     測定器は次のことに注意して制作しました。

    1. 軽貨物自動車の荷台に乗る程度の大きさであること。
    2. 測定器の通気盤上に堆積するふんは少なくし堆積時間の短縮と省力化をはかる。
    3. 一般的な通気発酵時と測定器の通気抵抗測定値が変わらないこと。
    4. 送風量を調整できること。
    5. 測定器の配管と通気盤による通気抵抗値は低く抑えること。
    6. 水分の多いふんを測定するときも、正しく測定できること。
    7. 制作経費が安価なこと。

     1. は通気盤の一辺を90cmと小さくし、2. は通常堆積容積に対して1/3に減少することで、4. はインダーターにより調整可能とし、5. と 6. は塩ビ配管でなく通気盤とすることで、7. は制作費130,000円以内におさえることにより制作段階で解決しました。3. については比較試験(後述)を実施し、確認しました。

    装置の使用方法

     図−4のように配置し、通気盤上にふんを堆積しない状態で配管と通気盤による通気抵抗値を読みます(これをブランクとする)。つぎに通気盤上に測定したいふんを堆積してその時の通気抵抗値を読み、この値からブランク値を差し引いて堆積ふんの通気抵抗値を判定します。

    図−4 簡易静圧測定器による通気方法

    装置の性能調査結果

    制作した測定器の試験方法は、対照区を一般的な堆積規模の通気発酵(図−3)としふんの水分含量と送風機を変えてその時の通気抵抗を測定しました。堆積容積は約20m3です。試験区は測定器を図−4のように設置し通気盤上に対照区の約1/3量を堆積し、対照区と同様に水分含量と送風量(インバータにより調節)を変えながらその時の通気抵抗値を測定しました。その結果、水分含量によってわずかな差がみられることもありましたが、3.5〜11mmH2O程度であり、当測定器を用いた判定はじゅうぶん可能であることがわかりました。

    図−3 ブロワーと塩ビ配管による通気方法

    測定器を使って調整技術の向上を

     このように制作した測定器は、農家で調整したふんをこの測定器上に堆積し、通気抵抗の高低により通気発酵に適したふんかどうかを総合的に判定することができます。

     たとえば、水分の少ない戻し堆肥を生牛ふんと混合し調整したが、通気抵抗値が100mmH2O以上と高い値を示した場合、すぐにオガクズ等を加えて再調整し、適切な通気抵抗値にまで調整して良好な発酵を得ることが可能となります。

     今後は当測定器の活用を推進して、農家でふんのかさ密度、副資材の選択等調整技術の向上をはかり、発酵処理施設の効率的利用を支援していきたいと考えています。

    (筆者:徳島県畜産試験場専門研究員兼環境科長)