あいであ

『肉質の差は除角から』

加 藤 昌 弘

は じ め に

 除角は、一般的に酪農家では管理のしやすさおよび角突きによる流産防止という点で、従来から多く普及しているとともに、最近では群管理による多頭飼育肉用繁殖牛農家でも普及されはじめてきており、畜産では非常に基本的な技術です。しかし、肉用牛肥育農家では群管理下における角突きが枝肉屠体の瑕疵(アタリ)発生率にかなり影響があると考えられていながらも、労力面を考えて除角を行わない農家が多いのが現状です。


写真−1 経営者の塚田正行さん


 埼玉県児玉郡美里町に住み、家畜商を営むかたわら約 250頭の交雑種主体肥育経営を行っている塚田正行さんは、前述のような状況の中で肥育牛全頭に除角(厳密にいえば除角による矯角)を実施して、肉質を向上させている先進的農家の一人です(写真−1)。

1.除角をはじめた動機

 5m×10mの牛房に10頭の牛を収容していたところ、明らかに角突きが原因と考えられる瑕疵(アタリ)が牛房内の牛に3〜4割程度発生(角突き順位が高く仕上がりが早い牛に限って、仕上期の動きが鈍くなった時に、今まで下位であった牛に角突きされて瑕疵(アタリ)が発生)していたので、獣医師等と相談のうえ、肥育牛全頭に除角による矯角を実施することとしました。

 

2.除角時期および方法(図−1)

図−1 角にゴム紐をまいた状態(上から見た図)

(止血処置)         (除角)         (除角後)

 生後12カ月齢くらい(角がある程度伸びてきてから)に除角時の出血を抑えるため、角の内側に力が掛かるように角根部の外側にゴム(自転車の荷台に荷物を固定する時に使う荷造の紐(ゴム)のようなものでよい)を巻き付けた後、角の前側が1/3、後側が2/3程度残るように高圧電線を切るケーブルカッター(写真−2(2万4000円程度))を縦にして、斜めに角度をつけて除角を行い、翌日、出血の具合をみて角根部に巻き付けたゴムをほどくと、その後、前から後へ内側に巻き込むように伸びて矯角される(写真−3(基本的に短く角を残した側が長く伸びる傾向))。


写真−2 ケーブルカッター


写真−3 除角後

 全頭除角実施後は、前述の牛房に12〜13頭程度収容しても瑕疵(アタリ)の発生率が全くなくなり、角突きによる発育不良牛も減少し、牛房全体の肉質が平均的に向上しました。
 また、出荷の際に内側へ巻き込んでいる角がちょうど良い取手がわりになり、牛房内から運搬車への搬入が容易になりました。
 以上のような効果を確認した後、塚田さんは家畜商としての取引先である肥育農家にもこの除角による矯角技術を指導し、効果をあげ非常に喜ばれています。

(報告者:埼玉県畜産会畜産コンサルタント)