〔中央畜産会からのお知らせ〕

畜産におけるインターネットの活用

 

は じ め に

 1996年、マイクロソフト社のWindows95 を搭載したパソコンの発売とともに、わが国は爆発的なパソコンブームとなりました。それまでは、パソコンといえば、「使い方がわからない」「値段が高すぎる」などと言われ、敬遠されがちでしたが、このブームにより低価格で高性能機、誰でも使えるオールインワンモデルが発売され、家庭電化製品のように身近なものになったようです。この時、もう一つ注目されたのが、「インターネット」でした。これは、自宅にいながら世界の情報をいち早く、文字、画像、音声で収集できるということで、多くの人々がその便利さに取り付かれ、企業などでも新たな広告手段として注目され、わが国においても利用者が急増しました。
 ところで、畜産経営においても「国際化」という厳しい状況の中、国内外の先端技術情報や経営状況をいち早く収集し、活用することは、今後の畜産経営にとって大変重要なことだと考えられます。また、既存の経営方針だけではなく、産直など新たなビジネスチャンスの開拓や消費者とのコミュニケーションの場を求めることも必要となります。これらのことに応えられるのが、まさにインターネットだと言っても過言ではありません。
 そこで、インターネットの概念と畜産におけるインターネットの利活用について紹介します。
 
 

1.インターネットの概要

(1)インターネットの歴史

 インターネットは、1960年代アメリカの国防総省が始めたARPAnet(アーパネット)がその始まりとされています。当時のアメリカはソビエトと冷戦状態にあったため、ARPAnet は軍事研究用のネットワークとして構築され、アメリカ国内で核攻撃が起こった場合を想定し、一部のコンピュータシステムが破壊されても、その機能が維持できるようなネットワークとして研究が行われました。
 その後、NSF(アメリカ国際科学財団)が、このネットワーク方式に注目し、学術研究を目的としたネットワークを考案し、1986年にはNSFNETとして各大学間のコンピュータを結んだネットワークが構築されました。
 一方、ARPAnet は軍事目的部分を分離して、残りの部分は1989年にNSFNETへ吸収となりました。このころWWW とモザイクが登場し、インターネットの普及に拍車がかかりました。そして、企業を中心としたCIX (キックス)も接続され、今日のインターネットとなり、商用化への開放をきっかけに、インターネットの接続業務を売り物にするプロバイダが誕生しました。

(2)インターネットの特徴

1)高速なネットワーク

 家庭でインターネットに接続する場合は14,400bps 〜64Kbps、企業内のLAN 経由ではそれ以上のスピードで高速通信が可能です。これにより画像や音声などデータ量の多いマルチメディア通信が可能になりました。

2)オープンなネットワーク

 インターネットは世界中に結ばれたネットワークであり、その基本プロトコル(通信規約)がTCP/IPといわれる通信方式で行われています。TCP/IPはもともとUNIX系のコンピュータで使われていたプロトコルで、その技術が公開されているため、個人でもプロバイダ経由でインターネットに接続することを可能としました。

(3)インターネットのサービス

1)WWW (World Wide Web)

 WWW は、今までテキスト形式(文字のみの情報)だけであったインターネット上の情報形式を、ニュース、画像、動画、3次元画像などを取り入れた情報の受信・発信を可能としました。この機能を利用するためには「Netscape Navigator」「Internet Explorer 」などブラウザというソフトが必要となります。これにより「ホームページ」と呼ばれる形式をコンピュータの画面上に表示することができます。 2)電子メール(E-Mai1l)  電子メールはインターネット上のサービスでも代表的なものです。
 郵便の手紙とは異なり、コンピュータで作成した文書や画像、プログラムなど電子的記録がなされているものをそのまま相手に送ることができ、送られた電子メールはインターネット上の様々なコンピュータを経由して、数秒から数分間で相手先に届きます。また、送られてきた文書の加工、再構成、さらには整理保存が簡単にできます。 3)ネットニュース(Net News) インターネット上に電子会議室や電子掲示板をつくり、共通な話題について多くの人々と情報交換や討論ができ、アメリカ人や日本人という区別なく、全世界の人々とのコミュニケーションが可能となりました。


図−1 電子メールの概念

4)FTP (File Transfer Protocol)  インターネット上でファイルの送受信を行うものです。これによりインターネット上のフリーソフトウェアなども受け取ることができ(ダウンロード機能)、その反対にプロバイダ(インターネット接続業者)に自分のホームページを開設することができるようになりました。図−2 ネットニュースの概念5)TELNET この機能を利用することによって、自分のコンピュータからインターネットを通じて、会社や友人などのコンピュータに接続することが可能となりました。


図−3 TELNETの概念

2.農業・畜産生産者からの情報発進事例

 最近は、パソコンの操作性が良くなったことや低価格になったことで、農業や畜産の経営者やその家族が、インターネットのネットニュースや電子メールで新たなコミュニケーションを利用している人やホームページを作成してインターネット上で公開している人が徐々に増えつつあります。そこで、代表的な2つのホームページを紹介します。

(1) 高栖牧場のホームページ (http://www2d.meshnet.or.jp/~teatime)

 茨城県の酪農家高栖洋一氏のホームページは、牧場の紹介、牛乳の作り方、家族紹介、牛の写真館、イラストギャラリー、リンクページ、ゲストブックという構成です。
 高栖氏は「酪農や牛乳についてもっと紹介するホームページがあっても良いのではないか」という思いから、自らホームページを作り始めたそうですが、公開後は、雑誌での掲載依頼や小学生から質問がくるなどの反響があったそうです。さらに、同じ酪農家から電子メールが届いたりするなど交流が広がったようです。
 高栖牧場のホームページのような自分の農場を紹介するという自己PR型ホームページは、畜産のみならず他の農業部門にも多いのですが、最大のメリットは、見ず知らずの人とネットワークで新たなコミュニケーションが図れることです。

(2) バーチャル八百屋 (http://www.yaoya.com/)

 兵庫県の亀井秀郎氏が作成しているサイバーモール(仮想商店街)です。このホームページは、全国各地で産直を希望している生産者を集め、米、野菜、果物、卵などをインターネット上で販売している有名な事例です。各生産者がそれぞれ農場の紹介、生産方法、販売価格などの情報を公開して販売品の PRを行っています。このような事例は最近多く、まさにインターネットを新しいビジネス手段としていることがうかがえます。ただし、当然のことながら、次のようなメリットとデメリットはあります。
  1. メリット

  2. ・価格設定は自分ができる。
    ・自分のやり方や農産物のPRが可能。
    ・新しい商品のテスト出荷が可能。
    ・口コミによる拡大の可能性はある。
    ・消費者の声が聞ける。
    ・反応が早い。
    ・クレームへの対応、アフターケアが迅速にできる。
  3. デメリット

  4. ・安定した出荷数量が望めない。
    ・市況変動のときの価格決定の難しさ。
    ・梱包代や宅配利用によって流通コストが増加。
    ・代金回収の手間がかかる。
    ・顧客確保とリピーターの安定化。

3.畜産関係団体からの情報発信

 行政機関や畜産関係団体が所有する情報は多種多様で、内容についても多岐にわたります。このような状況の中、畜産関係団体の所有する畜産情報の一体的体制を整備するため、平成6年度に農畜産業振興事業団中央畜産会中央酪農会議家畜改良事業団が中心となり、畜産情報ネットワーク推進協議会を結成し、情報提供の方法、提供情報の内容等について検討を行ってきました。その結果、当時、日本ではまだ一般化されていなかったインターネットによる情報提供手段を選択し、平成8年4月に「畜産情報ネットワークLIN(Livestock industry Infomastion Network)」のホームページを開設し、畜産情報ネットワーク推進協議会の4団体、農林水産省畜産局都道府県のホームページも同時に開設をしました。その後、平成10年3月までに農林水産省家畜改良センター、畜産関連団体21団体が加わり、畜産の経営や技術、消費者向けなどの幅広い情報を提供しています。

4.中央畜産会からの情報発信

 中央畜産会では、畜産経営者や指導者等を対象に、経営・技術についての情報提供を行っています。

(1)畜産文献検索

 国内で発行されている畜産関連の月刊誌、学会・研究会誌、国や都道府県の試験場報告等116誌、約6万8,000件の文献が登録されており、1つの文献には300字程度の内容抄録がついています。

(2)補助事業・制度資金データベース

 畜舎施設の取得や家畜の導入資金の調達などの投資は、経営者にとっては頭を悩ませる問題ですが、補助事業や制度資金融資などの制度を利用するためには、ある程度の知識が必要となります。しかし、それらを調べるには時間もかかり、なかなか難しいことです。そこで、国の行う畜産関係補助事業と制度資金についての情報を提供し、検索もできるようにしています。

(3)畜産経営技術Q&A

 畜産経営者の経営・技術の疑問や課題に答えるため、Q&A方式による解説を行っており、現在の収録数は900件となっています。

(4)畜産収益性と生産性の状況

 畜産会では、経営診断をはじめとする経営支援指導事業を実施していますが、経営診断にあたっては、診断した経営の実績値が経営技術水準判定のための比較値として大きな意味を持っています。このデータベースは全体平均値だけではなく、経営規模別や収益性別なども収録しており、内容については、「経営診断結果」「先進経営調査」「肉用牛の生産技術」の3種類について、5カ年間の結果を収録しています。

(5)畜産会経営情報

 酪農、肉用牛、養豚の経営者、都道府県指導機関などを対象に毎月1回配布している本誌「畜産会経営情報」を提供しています。内容については、経営・技術の面を紹介した「技術セミナー」、各地の畜産経営者の経営やその実践を紹介している「経営自慢・明日への息吹」、経営者が実践している創意工夫の紹介をした「あいであ&アイデア」を中心としています。

(6)畜産百科

 消費者に家畜や畜産物の生産について理解を深めてもらうため、近く公開を予定しています。酪農、肉用牛、養豚、採卵鶏、ブロイラー、馬、緬羊、特用家畜の各部門別に図、写真、イラストを交えた解説を中心にしています。

(7)新聞記事見出し検索(仮称)

 新聞の全国紙や地方紙の中には、何らかの農業や畜産の関連記事が掲載されていますが、全国紙ならともかく、地方紙は目にする機会が少なく、各地でどの様な情報があるかなかなか把握できません。そこで、全国紙ならびに地方紙から発信されている新聞記事の情報を近く公開する予定です。

(8)畜産会議室

 インターネットのネットニュース機能を利用して、畜産に関する意見や質問を広く一般に掲示することにより、多くの人々で討論や検討して解決をはかる場所です。酪農、肉用牛、養豚、養鶏の畜種別コーナーと意見交換コーナーの5つからなっており、随時、意見や質問を受付ています。

5.都道府県の畜産情報

 都道府県段階の畜産関連情報も多種多様にありますが、他県の情報はなかなか把握できません。そこで、46道府県の家畜市場の情報、各地で生産されている畜産物情報、広域流通が難しい堆肥生産の情報などを提供しています。この他にも経営者自らの経営診断を可能とした「自己診断・経営予測システム」、都道府県の畜産関連の統計情報を掲載した「都道府県畜産統計の状況データベース」も公開しています。

(1)都道府県畜産の状況データベース

 都道府県の畜産関係機関・団体の収録と、平成4年から8年までの5カ年について都道府県別の畜産関係統計を収録しています。なお、統計については、データをダウンロードしてパソコンの表計算ソフトで加工やグラフ化も可能です。

(2)自己診断・経営予測システム

 畜産経営の中には、日々の記録記帳を行い、それを取りまとめて青色申告書などの税務申告に利用したり、財務諸表を作成している経営者も多いと思われます。また、家畜の生産性についても実績数値を把握していると思われます。そこで、経営者自らが経営診断を行い、翌年の経営予測に利用できることを目的としたソフトを作成しました。このソフトは、インターネット上で料金無料のフリーソフトとして提供しており、対象家畜は酪農、肉用牛繁殖及び肥育、養豚、採卵鶏、ブロイラーの6部門となっています。

お わ り に

インターネットの普及により、多くの情報を収集し、活用することは、ダイレクトに経営の向上につながる可能性が出てきました。さらには、経営者自らが情報発信者となり、自分で作った畜産物を販売できるというビジネスチャンスや消費者とのコミュニケーションが図れる場も出てきました。
 しかしながら、自ら積極的に参加しなければ、この便利なインターネットも生かされてきません。したがって、今、自分の経営にとって必要な情報を収集するという段階から、むしろ、インターネットの機能をどう利用して経営展開を図っていくかと、という段階になっているといえます。

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