―350haの土地資源を活用して放牧・飼料生産―
牧場産飼料100%による
環境保全型牛肉生産にチャレンジ

北海道山越郡・北里大学八雲牧場

北海道の玄関口・函館から北西へ約80km。渡島半島のほぼ中央部にあるユーラップ岳の麓・標高600mほどの丘陵地に広がる草地に、黒、白、茶色が点々とみえる。

 昨春、北里大学獣医畜産学部付属フィールドサイエンスセンター(FSC)の環境保全型畜産研究部門として新たなスタートを切った八雲牧場の肉牛だ。

「5月から11月中旬まで放牧しています。雪におおわれる冬期は舎飼いですが、飼料はこの牧場内で生産したグラスおよびコーンサイレージのみで、年間を通じて100%自給飼料による肉牛肥育に取り組んでいます」(センター長の萬田富治教授)。
 同牧場の開設は昭和51年。当初は草地を活用した低コスト牛肉生産を目指したが、その後、穀物飼料を利用した舎飼いに移行した。
 しかし、収益性の悪化や飼養頭数の増加に伴う環境汚染問題の発生などから、平成6年、経営方針の全面的見直しを実施。広大な草地と厳しい気象条件に調和し、21世紀の畜産の方向を見据え、物質循環を重視した自給飼料による環境保全型牛肉生産を目指すことになった。
 さらに昨年4月、3ヵ所の農・牧場を改組再編し、FSCが発足。八雲牧場は獣医畜産学部付属の環境保全型畜産研究部門として強化され、土→草→家畜(肉牛)→排せつ物の資源循環を軸とした総合研究・教育の場として運営されているもの。

 具体的には日本短角種、アンガス種を主体に、ヘレフォード種、シャロレー種とこれらの交雑種約300頭を飼養。牧場総面積(350ha)の3分の2を占める牧草地で生産される自給飼料100%による牛肉生産にチャレンジしている。

 穀物を多給する肥育方式と違って赤肉生産を目指すが、放牧技術、飼料品質の改善・向上の結果、最近では増体、赤身率などかなりレベルアップされつつあるという。今後も雑種強勢を活用し、交雑種利用を進めることにしている。

 また、八雲牧場は生産物の流通・販売戦略を追究することも大きな研究目標に掲げる。すでに同牧場の趣旨に賛同する首都圏の生協が「ナチュラルビーフ」の商品名で組合員に供給する試みも行われている。

 こうした消費者との連携を視野にいれた八雲牧場の理念や実践は、資源循環型畜産に取り組む畜産関係者にとって大いに参考になりそうだ。(関連記事39〜43ページ)



畜産コンサルタント9月号  2002
※情報は掲載当時のものです。